野菜畑の土づくり
野菜畑の土づくり
まもなく春夏野菜づくりが始まります。農作物栽培の基礎は土づくりにあると言われています。良品生産に向けて野菜畑の土づくりを行いましょう。
1 土づくりの考え方
野菜畑は、作付年数が増すほど生育障害が多くなるのが実際です。生育障害の80%以上が病害虫の発生による連作障害に起因しています。連作障害が起きる理由として、窒素などの土壌養分が過剰に集積したり、養分間の割合が不均衡になること、過度な耕うんによる土壌の劣化などが指摘されています。
このため、堆肥等の有機資材や植物の機能を活用して、土壌の生態系の富化と活性化を図りながら作物を栽培することが大切です。野菜畑の土づくりを進めるためには、以下の3点が柱になっています。
- 作物の生育を促すための 養分供給
- 根張りを良くするための 土壌物理性の改善
- 根を活性化するための微 生物相の改善
(1)養分供給のために
野菜栽培を続けるためには、土壌養分を適正に保つことが基本になります。
化学肥料のみの肥培管理を続けると、土壌の物理的な性質や生物相を維持することが難しくなるのが一般的な傾向です。有機物の総合的な改善効果を期待して有機物を施用する必要があります。
(2)根張りを良くするために
作物が良く生育するためには、根が深く広く十分に張り、養水分が良好に吸収できる必要があります。作物の根が良く張るには、温度や養水分のほか土壌が膨軟である必要があります。
作物の根張りは相当深いもので、ホウレンソウの現地事例でも深さ70cm以下まで分布していました。
現在の耕うんは、トラクターなどの重量機械の多回数耕うんやロータリーが用いられるため、下層土に圧密層の形成される圃場が少なくないので、2~3年に一度は深根性の作物を取り入れ、耕うん機の届かない下層土の構造を改善することが望ましいのです。
(3)土壌生物を増やすために
土壌養分が多すぎると、微生物の活性が落ち、多様性も悪化します。土壌の微生物活性を期待する場合は、土壌養分を適正に保つことが大切です。
また、先ほど申し上げた適切な有機物の投入や下層土の改善は微生物活性を期待する面からもプラスになります。
2 堆きゅう肥の特性と施用法
(1)家畜糞尿の特性
家畜糞尿の特性は、その種類によって大きく異なります。例えば、養分含有率は鶏糞で高く、牛糞で低いといった違いがあります。さらに、養分含有率は飼料、糞尿の処理方法、季節等によっても変わります。それに応じて肥効も変わりますので、それらの特徴を良く把握して施用することが大切です。
窒素の無機化は温度の影響を強く受け、いずれも高温で早く、低温で遅くなります。
鶏糞は、炭素率が5~9と低いため、分解が早く、比較的速効性です。また、養分含有率が高い上、土壌中に有機物があまり残らないので、有機質肥料と考えるのが妥当です。
牛糞は、窒素含有率が低く、炭素率は20以上とやや高いため分解は緩やかで、肥効も緩効的ですが、養分含有量は少なく、有機物は土壌中に残ります。
豚糞の成分は、鶏糞と牛糞の中間で、炭素率は10~15です。肥効や土壌への影響も同様に中間的な性質を示しますが、養分含有量が比較的多いので有機質肥料に近いものとして扱うべきです。
家畜糞の施用基準量は、作物等によっても異なりますが、表1を参考にして下さい。
なお、生糞施用は、容易に分解される糖やアミノ酸等が多量に含まれているため病原菌を増殖させたり、分解時に生ずる有機酸やガスによって障害を生じやすいので、完熟させてから施用することが必要です。
(2) 堆きゅう肥を施用した場合の施肥量
家畜糞の肥料の代替率、及び有効成分量【表2】は、種類によって異なりますので、これを目安に減肥します。
また、施肥窒素の全量を家畜糞や堆きゅう肥で施用すると、初期生育が遅れたり、生育障害が生じる恐れがありますので、窒素施用量の30~60%を家畜糞や堆きゅう肥で施用し、残りは化学肥料や有機質肥料で施用するのが無難です。
【表1】関東東海地域都県における有機物施用量基準の総括表(抜粋)(単位:t/10a)
作物 | 堆肥(わら類) |
糞堆肥(おがくず入り)
|
||
牛 | 豚 | 鶏 | ||
水稲 | 0.5~2.0 | 1.0~2.5 | 0.5~1.5 | 0.5~1.0 |
一般畑作物 | 0.3~4.0 | 1.5~4.0 | 0.5~2.0 | 0.2~2.0 |
野菜 | 0.5~5.0 | 1.0~5.0 | 1.0~4.0 | 1.0~4.0 |
果樹 | 1.0~7.0 | 1.0~7.0 | 0.5~5.0 | 1.0 |
(農研センター1984まとめ)
【表2】家畜ふん及び家畜ふん堆肥の有効成分量(kg/t)
処理形態 | 畜種 | 含水率 | 窒素 | りん酸 | カリ |
乾燥ふん | 牛ふん | 28.0 | 5.0 | 11.0 | 15.7 |
豚ぷん | 24.3 | 13.0 | 27.4 | 13.6 | |
鶏ふん | 18.9 | 20.7 | 36.4 | 22.0 | |
堆肥化物 | 牛ふん | 66.0 | 2.1 | 4.2 | 6.7 |
豚ぷん | 52.7 | 6.8 | 11.6 | 9.5 | |
鶏ふん | 38.5 | 12.5 | 22.1 | 14.9 | |
木質混合堆肥化物 | 牛ふん | 65.4 | 1.7 | 3.3 | 5.3 |
豚ぷん | 55.7 | 2.8 | 8.9 | 7.4 | |
鶏ふん | 52.4 | 2.8 | 13.7 | 9.2 |
(農研センター、神奈川県の試験事例及び草地試資料により作成)
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。