いちご(とちおとめ)の管理について
いちご(とちおとめ)の管理について
1 保温開始
保温開始は腋花房分化後に行います。ポット育苗では10月15日~20日、無仮植育苗では10月20日以降を目安とします。また、ビニール被覆直後は外気温がまだ高いため、日中はハウス内が30℃以上にならないように注意します。
2 チップバーン対策
保温を始めると新葉のチップバーンやがく焼けが発生しやすくなるので、頂花房の出蕾期から開花期までのかん水はやや多めに行いましょう。
【表1】かん水管理の目安
保温開始~開花期 | 開花期~収穫初期 | 収穫中期以降 |
5~7日ごと | 10~14日ごと | 10~14日ごと |
3 病害虫防除
(1)うどんこ病
うどんこ病は、低温・窒素過多で起こりやすくなります。以下1~4の対策をしっかり行いましょう。
- ハウス内の空中湿度を抑えるため、全面マルチをすることは、有効な防除手段となります。
- うどんこ病が発病した果実や花房はその後の伝染源となるので、速やかに除去してハウス内に放置しないようにしましょう。
- うどんこ病の発生が止まらない場合は、いちごの体内窒素濃度が高くなっている可能性があります。追肥を控えるとともに、次作の施肥量を見直す(基肥で窒素成分量15kg/10a)などの改善策を講じましょう。
- 農薬を使用する場合は、薬剤耐性菌が発生しないよう系統の異なる剤を使用しましょう。
なお、生物農薬のバイオトラスト水和剤は有効成分となる微生物がうどんこ病の病原菌を食べる働きがあるので、発生初期の散布は効果的ですが、果実が汚れる場合があるので注意が必要です。
(2)ハスモンヨトウ
今年は、ハスモンヨトウの発生が大変多くなっています。ふ化直後の幼虫は集団でいますが、成長するとやがて分散してしまうため、被害は急速に拡大します。以下1~4の対策をしっかり行いましょう。
- 早期発見に努め、卵塊やふ化直後の幼虫が密集している葉は、見つけ次第、摘除しましょう。
- 中・老齢幼虫になると薬剤に対する感受性が低下するので、若齢幼虫のうちにプレオフロアブルやフェニックス顆粒水和剤で防除しましょう。
- ハスモンヨトウは、薬剤抵抗性がつきやすいため、同一系統の薬剤の連用は避けましょう。
- ほ場周辺の雑草は発生源となるので、雑草管理を徹底しましょう。
(3)ハダニ類
ハダニ類の防除では、カブリダニを利用した方法が多く行われています。ここでは、ミヤコカブリダニ(商品名「スパイカルEX」)を利用したハダニ対策を紹介します。
最初にミヤコカブリダニを放飼する時期ですが、有機リン剤(例:ディプテレックス乳剤など)、合成ピレスロイド剤(例:アディオン乳剤、ロディー乳剤、マブリック水和剤20、アーデント水和剤など)、カーバメート剤(例:ランネート45DFなど)を使用すると、その後約3~5か月間はミヤコカブリダニの定着や増殖に影響を及ぼすので、これらの農薬をすでに使用している場合、散布した日から放飼するまで3か月以上間隔をあける必要があります。
ミヤコカブリダニに影響のある農薬を使用していない場合、放飼時期は保温開始以降であればよいのですが、苗による持ち込みでハダニの発生が多い場合は、放飼1週間前にミヤコカブリダニに影響の少ない殺ダニ剤(例:マイトコーネフロアブルなど)を散布してハダニの密度を下げてからミヤコカブリダニを放飼します。
使用上の注意点はこれ以外にもありますので、ラベルをよく読んで使用してください。
なお、ミヤコカブリダニを放飼した後でも使用できる農薬は表2のとおりです。
【表2】ミヤコカブリダニに影響の少ない農薬
対象病害虫 | 農薬名 |
アブラムシ類 | チェス水和剤 ウララDF |
ハダニ類 | ダニサラバフロアブル マイトコーネフロアブル スターマイトフロアブル |
ハスモンヨトウ | プレオフロアブル フェニックス顆粒水和剤 トルネードフロアブル |
対象病害虫 | 農薬名 |
ミカンキイロ アザミウマ |
マッチ乳剤 アタブロン乳剤 |
うどんこ病 | 硫黄粒剤(夜間くん煙) カリグリーン ジーファイン水和剤 バイオトラスト水和剤 |
灰色かび病 | ボトキラー水和剤 エコショット |
※この表は平成22年9月17日現在の登録情報に基づき作成しています。
※農薬を使用する際には、必ず使用農薬のラベルを確認して適正に使用してください。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。