水稲の育苗管理について

水稲の育苗管理について

平成25年産水稲の栽培を振り返りますと、①寒暖の大きかった4月に低温による育苗の失敗が見られました。②5月31日にはヒメトビウンカの注意報が発令され、ヒメトビウンカによる縞葉枯病が多発した年となりました。③出穂期以降、気温が高く経過しましたが、高温対策に努め、白未熟粒等の発生は少ない結果となりました。
今一度、基礎技術を確認し、豊作に向けて取り組みましょう。

1 種子更新

種子は毎年更新しましょう。

2 塩水選

充実した種子を選ぶため、比重選をしましょう。(うるち米は、比重1.13、もち米は1.1)

3 種子消毒

種子消毒には温湯消毒と農薬による消毒があります。温湯消毒には発芽が揃いやすくなる効果もあり、防除効果は同程度です。減農薬栽培をすすめる場合は温湯消毒技術を導入しましょう。

(1)温湯消毒

乾いた籾を使用し、籾の間を温湯が流れやすいように、所定量を網袋に余裕を持って詰めましょう。温湯消毒は温湯消毒機を使用し、60℃のお湯に10~15分間浸漬し、浸漬後直ちに流水で冷却します。ただし、もち種子では温湯処理により発芽率の低下がみられますので、処理時間を6~8分間にとどめてください。

(2)薬剤消毒

薬液は所定の倍率に希釈し、種子容量の2倍(種子10㎏に薬液20㍑)を目安に準備しましょう。薬剤の効果を安定させるため、直射日光の当たる日向や極端な低温(10℃以下)となる場所を避けて行いましょう。

4 浸 種

消毒した種子を発芽させるために十分に吸水させます。(コシヒカリで積算温度が120℃。)浸種する水温は、10℃~15℃が適温です。浸種は最初の3日程度は静置し、水を換えないようにします。その後は、温度ムラが生じないよう網袋の位置を入れ替え、種籾の呼吸によりあわが生じたら、酸欠にならない程度に水を換えてください。

❖ 注意 ❖

昨年は浸種時の水温が低く、催芽が順調にすすまず、発芽がばらつくことがありました。

5 催 芽

浸種が終わったら、一斉に発芽させるために芽出し(催芽)をします。濡れむしろにくるんで、さらにビニールで包んで2日程度置いたり、風呂の残り湯に一晩漬けるなどして「はと胸状態」にします。

6 播 種

播種日の天候は出芽の善し悪しに影響するので、なるべく晴天の日に行いましょう。播種量は厚まきだと軟弱徒長になりやすく、苗いもちや植え痛みによる初期生育停滞等の原因となります。

(参考)

稚苗の場合催芽籾で1箱あたり200~220g(容量で350~400ml)
中苗の場合催芽籾で1箱あたり100~125g(容量で160~200ml)。

(1)床土

床土はJA等で販売している「育苗培土」を使用しましょう。粒の細かい水田の土やpHの高い畑の土は苗の生育不良、立枯病やムレ苗の発生などの障害の原因となりますので避けましょう。

(2)苗床

苗が水没したり生育が不揃いにならないよう、高低や凹みを作らないように均平にしましょう。

7 出 芽

(1)積み重ね出芽

角材の上に15~20枚重ねて積み、最下段と最上段に土を入れて灌水した箱を積み、保温マットやむしろとビニールで被覆して保温します。通常2~3日で出芽しますが、気温が低いと日数を要しますので、出芽が揃った箱から苗代に出して下さい。

❖ 注意 ❖

屋外の積み重ね出芽では、下の箱、苗箱の日陰側で出芽が遅れたケースがありました。気温が低い場合は積み重ねる苗箱の数を減らす、途中で苗箱を積み替える、日向側と日陰側を入れ替える等、温度むらの無いよう注意しましょう。

(2)露地出芽

播種後すぐ苗代に出して出芽させる場合は、気温によって出芽の善し悪しが大きく左右されます。保温マット等で被覆し灌水と換気に注意して、晴天時には高温による焼けや病害の発生、曇天の低温時には出芽不揃いなどの障害が発生しやすくなるので注意しましょう。

8 育苗管理

(1)緑化期(本葉1葉期まで)

出芽が揃ったら、持ち上がった覆土を灌水して落ち着かせ、種子が露出している場合は土をかけます。昼は寒冷紗で被覆し、夜はさらにビニールで被覆し、気温の低下が予想されるときは、さらに保温マット等で被覆します。温度管理の目安は昼が20~25℃、夜が15~20℃です。

❖ 注意 ❖

昨年は日中に気温が高くなり、ビニールハウスやトンネル被覆の育苗で温度管理がうまくいかず、苗が焼けたケースがありました。また、4月上旬、下旬に降霜があり、生育が止まった苗がありました。高温とともに低温にも注意して苗床の温度管理をしましょう。

❖ 注意 ❖

播種後、苗代に苗箱を広げ、冠水した状態で育苗した場合、発根が悪く、2~3枚で生育が停滞している場合がありました。原則、1葉期までは灌水せず、乾く場合は苗箱の様子をみて灌水しましょう。また、本葉2葉期以降、灌水する場合、根腐れをしないよう注意しましょう。

❖ 特に注意 ❖

昨年、猛威を振るった「縞葉枯病」を媒介するヒメトビウンカの飛び込みを防ぐため、①育苗中は寒冷紗等で被覆しましょう。また、②育苗床の周辺は事前に雑草を刈り取り、ウンカ類の居所をなくしましょう。

(2)硬化期~田植え(本葉1葉期以降)

生育が不揃いになるので本葉2葉期までは苗箱の縁以上には水を入れないで下さい。温度管理の目安は昼が20~25℃、夜が10~15℃です。

肥切れが見られるときは、落水し、1箱あたりチッ素成分で0.5g(硫安の場合2.5g)を0.5㍑の水に溶かして散布し、葉に付いた肥料は清水で洗い流して下さい。

田植えが遅れて苗が伸びすぎるときは、灌水を控えぎみに管理し田植え10日前頃に断根し、床面まで水を上げて下さい。

❖ 注意 ❖

4月下旬、ビニールハウスや保温資材を被覆した育苗でムレ苗が発生したケースがありました。水が豊富で温かい条件で育った苗は、葉や葉鞘が徒長し、根はあまり生育していません。ムレ苗は、そんな生育の苗が低温で根の活性が落ちて給水が追い付かず、葉が針状に巻く症状です。図を参考に苗を観察し、ムレ苗に注意しましょう。葉が青いうちに気づけば、給水、蒸散を抑える薬剤散布や田植えを早める等の対策があります。しかし、葉が巻いたあとも気が付かず、茶色に枯れた場合は対策がありません。

❖ 注意 ❖

5月上旬、軟弱な苗で、低温、強風の悪条件で田植えをすることになり、欠株、活着不良が見られました。
苗半作といわれる水稲栽培、ぜひ、豊作に向けて健康で丈夫な苗つくりにこころがけましょう。

ムレ苗の症状と目安
図1 ムレ苗の症状と目安
※つゆとは葉先から生じる水分です。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。