水稲の育苗から田植後までの管理について
水稲の育苗から田植後までの管理について
平成27年は4月に雪が降り、低温の時期がありました。また、5月上旬は芽だし苗が強い日差しや風で枯れる事例がありました。
関東甲信地方の3ヶ月予報(平成28年3月25日)によると、4月、5月の天気は数日周期で変わり、6月は平年並に曇りまたは雨の日が多く、平均気温の高い確率が40~50%と予想されています。
寒暖の変化が大きい時期なので、温度管理を誤ると、①苗立枯病の発生、②発芽後に芽が焼けてしまう、③生育後半にムレ苗が発生します。以下のポイントを参考に、健全で充実した苗をつくり、「美味しく」「高品質な」コメをつくりましょう。
1 育苗期の管理
この時期は気象変動が激しいため、苗立枯病や生理障害によるムレ苗(センコウ苗)が発生することがあります。苗代のトンネルや育苗用ビニールハウス内の温度管理(高温・低温)に注意してください。
田植え時期が遅れ、苗の色が全体的に黄色っぽくなった場合は、肥切れの可能性があります。その際は、床を落水し、苗箱1枚あたり窒素成分で0.5g(硫安の場合は約2.5g)を0.5ℓの水に溶かして灌水します。
(1)苗立枯病
苗立枯病の防除は予防が重要です。播種前に種子消毒や育苗箱消毒を確実に実施しておきましょう。
播種後に苗立枯病が発生した場合は、下記を参考に薬剤防除を行います。
表1 苗立枯病の防除薬剤(例)
(2)ムレ苗(センコウ苗)
予防として下記①~③のいずれかの方法があります。
①播種前にフジワン粒剤(苗箱1箱あたり15g)を床土へ混和する。
②は種時又は発芽後にタチガレエース液剤(500~1,000倍)を土壌灌注(苗箱1箱あたり500ml)します。※タチガレエース液剤の使用回数は栽培期間内1回。
③緑化始期にフジワン粒剤(苗箱1箱あたり25~50g)を散布します。
また、ムレ苗が発生初期であれば、すぐに田植をすると回復します。
2 田植前後の管理
苗がすぐに活着して生育できるよう、田植え時は降霜等の低温を避け、健苗を田植しましょう。
(1)田植えのポイント
高温対策:田植前の耕耘は、深さ15cmを目標に行います。根がより深く・広く張り、良好な生育の確保や夏期の高温対策に効果的です。
植付株数は坪当たり50~60株(30cm×18~22cm)が収量・品質面で安定しています。1株に植え付ける苗数は2~3本、植え付ける深さは2~3cmが理想です。
(2)粒剤箱施用による病害虫防除
表2を参考に、病害虫の予防をしましょう。
平成28年3月30日、埼玉県病害虫防除所は、イネ縞葉枯病の注意報を発表しました。ヒメトビウンカの越冬世代幼虫のイネ縞葉枯ウイルス保毒虫率(県平均5.0%)が高まっており、イネ縞葉枯病の多発が懸念されます。箱施薬剤によるヒメトビウンカの防除を徹底しましょう!
表2 育苗箱施薬による防除
<参考>
農薬の有効成分に注目すると同じ薬が入っていることが分かります。例:ウンカを対象とするアドマイヤーCR箱粒剤とビームアドマイヤースピノ箱粒剤には同じ有効成分のイミダクロプリドが含まれています。
なお、対象病害虫は薬剤によって登録が違う場合があるので、農薬ラベルの農薬安全使用基準で確認してから使用してください。
3 雑草防除
除草剤を散布した後は7日間湛水状態を維持し、その間は水があふれたり落水しないよう、適切な水管理に努めてください。なお、田植前の耕うんや代かきはていねいに行い、田面を均平に整えておくことが除草剤の効果を高めるポイントです。
苗の活着が悪いほ場や植え痛みが出たほ場は、使用時期を遅らせてください。また、気温が高くなると雑草の生育が早まり、使用時期の範囲内でも薬剤が効きにくくなるので注意しましょう。
4 施肥
基肥が過剰の場合、病害虫の多発や倒伏を助長するほか、食味の低下につながります。品種に合わせた適正な施肥量を遵守しましょう。
高温対策:①地力を高め、根の活性維持や登熟期まで元気に生育できるよう、たい肥を投入することが有効です。②また、ケイカル等のケイ酸質資材の投入は、根の活性維持による高温障害軽減の効果があります。
標記の農薬の登録情報は平成28年4月4日現在のものです。
農薬の使用に際しては、ラベルを良く読み、使用量や使用時期、有効成分ごとの総使用回数などの使用基準を必ず守ってください。
また、農薬の使用に当たっては、手袋、マスク等適切な保護具を使用するとともに、周辺の危被害防止にも注意してください。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。