水稲の中間管理
水稲の中間管理
6月25日発表による関東甲信地方の3か月予報では、「7月前半は、平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。後半は、平年と同様に晴れの日が多い見込みです。」と発表されています。天候に応じた適正な管理を行い、安定生産と品質向上を図りましょう。
1 こまめな水管理の徹底
分げつ促進を目的に浅水管理を行ってきましたが、有効分げつ(1株約18~20本の茎数)を確保できたら、中干しを実施します。5月中下旬に田植えした場合、移植後30~35日頃を目安にします。程度は田面に小ひびが入るくらいで、天候やほ場条件により異なりますが、7~10日が目安です。
中干し終了後、出穂前後各20日は湛水、特に出穂前後各1週間は深水とします。それ以外は間断灌水とします。落水は出穂後30日以降に行います。【図1】
なお、台風の通過後に高温・乾燥の風が吹くような天候が予想される場合は深水管理を心がけます。
【図1】中干し後の水管理
2 暑さに負けない施肥について
肥切れは株や根の老化を早めて食味を落としますので、適正な穂肥を実施しましょう。穂肥時期は、幼穂の長さにより診断します。穂肥量は、葉色板により、最長葉(展開葉の第2葉または3葉の中央部)の色を測定し、加減を判断しましょう。【表1】
ケイ酸質資材は、根の活力、葉の光合成能力を高め、病害虫にも強くします。もし、田植え前に施用していない場合は、出穂前45~35日に、ケイ酸加里を10aに20~40kg施用しましょう。
【表1】穂肥施用時期の目安
品種 | 作期 | 施用時期 | 幼穂の長さ | 葉色(単葉) | 施用量の目安※ |
コシヒカリ | 早期・早植 | 出穂18日前 | 8~15mm | 4.1~4.3 | 2.5㎏ |
キヌヒカリ | 早植 | 出穂20~23日前 | 1.5~2mm | 4.3~4.5 | 2.0㎏ |
キヌヒカリ | 普通 | 3.0㎏ | |||
彩のかがやき | 普通 | 出穂25日前 | 1mm | 4.0~4.3 | 3.0㎏ |
※10a当たりの窒素成分量です。
土壌や気象条件により、施肥量を加減しましょう。
3 病害虫防除
初期の病斑・食害等の発見に努め、初期防除を心がけましょう。【表2】【表3】
また、補植用取置き苗の早期撤去、畦畔雑草管理等、耕種的防除も積極的に行いましょう。出穂前後各2週間の草刈りはカメムシ類を水田に追い込むため避けましょう。
【表2】防除時期の目安
病害虫 | 防除適期 |
紋枯病 | 幼穂形成期~穂ばらみ期 |
いもち病 | 分げつ期~穂ぞろい期 |
イネツトムシ | 7月下旬~8月上旬 |
イネアオムシ | 6月上旬~8月下旬 |
カメムシ類 | 出穂期~乳熟期 |
ヒメトビウンカ | 第2世代幼虫期(6月下旬~7月中旬) |
【表3】薬剤例(記載農薬は平成24年6月1日現在の登録状況に基づいています)
農薬名 | 使用量・希釈倍率 | 使用時期 | 使用回数 | 主な適用病害虫※ |
キタジンP粒剤 | 3~5kg/10a | 初発7日前~初発時(葉いもち) 出穂7日~20日前 (穂いもち、紋枯病) |
2回以内 | いもち病 紋枯病 |
イモチエース粒剤 | 3kg/10a | 収穫35日前まで | 1回 | いもち病、紋枯病 |
モンカット水和剤 | 1000倍 | 収穫14日前まで | 3回以内 | 紋枯病 |
パダンオリゼメート粒剤 | 3~4kg/10a | 収穫30日前まで | 2回以内 | いもち病、もみ枯細菌病、イネツトムシ |
パダンバッサ粒剤 | 3~4kg/10a | 収穫30日前まで | 5回以内 | ウンカ類、イネツトムシ、ツマグロヨコバイ |
スタークル粒剤 | 3kg/10a | 収穫7日前まで | 3回以内 | カメムシ類、ウンカ類、ツマグロヨコバイ |
水田への粒剤散布後7日間は、落水・かけ流しをしないなど適切な「水管理」を実施しましょう。
※当地域における主要なもののみ記載してあり、適用病害虫を全て記載しているわけではありません。
4 雑草防除
枯れ残した雑草がある場合、中・後期剤処理を行いましょう【表4】。
難防除雑草「クサネム」はマメ科一年生雑草で、黒色の種子が米粒大のためグレーダーで選別できずに玄米に混入することが問題となっています。水田では、水中でも発芽したクサネムが水面を浮遊し、田面が露出した部分で定着・生育します。
次のような対策を行いましょう。
- ほ場の均平と漏水を防止し、田面を露出させないようにします。
- 発生ほ場ではクサネムの種子の成熟前までに抜き取り、ほ場外で処分します。
- 除草剤による防除
クサネムの種子は休眠性で、ダラダラと発芽することから除草剤の体系処理(初中期一発剤+茎葉処理剤)が有効です。但し、種子の寿命も長いため、1年で完全に枯殺ができないことがあります。草丈が大きくなると完全に枯殺できないので、散布適期を見逃さないようにします。
【表4】薬剤例(記載農薬は平成24年6月1日現在の登録状況に基づいています)
農薬名 | 主な適用雑草名※ | 使用量 | 使用時期 | 使用方法等 | 使用回数 |
クリンチャーEW | ノビエ | 100mL/10a | 移植後20日~ノビエ6葉期(但し、収穫30日前まで) | 湛水散布又は落水散布(展着剤加用) | 2回以内 |
バサグラン液剤 | 水田一年生雑草イネ科除く)、クログワイ、ホタルイ等 | 500~700mL/10a | 移植後15~50日まで(但し、収穫50日前まで) | 落水散布又はごく浅く湛水して散布 | 2回以内 |
サンパンチ1キロ粒剤 | 水田一年生雑草、クログワイ、ホタルイ、クサネム等 | 1kg/10a | 移植後15日~ノビエ3.5葉期(但し、収穫60日前まで) | 湛水散布 | 1回 |
※当地域における主要なもののみ記載してあり、適用雑草を全て記載しているわけではありません。
クリンチャーとバサグランには、粒剤もあります。粒剤散布後7日間は、落水・かけ流しをしない。
ノビエと広葉雑草が同時に発生した場合、クリンチャーバスME液剤は展着剤加用しないで使用。
農薬の使用に際しては、ラベルを良く読み使用基準を守るとともに、周辺への飛散防止にも注意してください。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。