水稲の育苗管理について

水稲の育苗管理について

水稲栽培において苗作りは、「苗半作」と言われるほど、基本であり、また重要な工程です。しかし近年、播種量、育苗期間、育苗管理等が不適切なため、厚播きで下葉の枯れ上がった線香苗、先端を切って植えるような軟弱徒長苗、育苗日数が長く葉が黄化した老化苗などが移植されているほ場が見受けられます。このような苗を植えると活着が遅れ、結果として田植え時期を遅くしたことと変わらなくなり、収量・品質共に低下してしまいます。

この機会に今一度、基礎技術を確認し、昨年以上の収量、品質となるよう、丈夫な苗作りに取り組みましょう。

1 種子更新

種子は毎年更新しましょう!

2 塩水選

充実した種子を選ぶため、比重選をしましょう!

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表1 塩水の作り方

3 種子消毒

種子伝染する病害虫(いもち病、シンガレセンチュウ等)を防除するために種子消毒を徹底しましょう!

種子消毒には温湯消毒と農薬による消毒があります。温湯消毒には発芽が揃いやすくなる効果もあり、防除効果は同程度です。減農薬栽培をすすめる場合は温湯消毒技術を導入しましょう。

4 浸種

浸種水温、特に初期水温の確保を徹底しましょう!

  • 浸種する水温:10℃~15℃が適温。(特に浸種1日目の水温は10℃~15℃を保持しましょう。)
  • 積算温度(水温×浸漬日数):コシヒカリで120℃、その他品種で100℃が目安。
注意

温度ムラが生じないよう網袋の位置を入れ替え、種籾の呼吸によりあわが生じたら、酸欠にならない程度に水を換えてください。

5 催芽

温度は30℃、はと胸状態に仕上げましょう!

浸種が終わったら、一斉に発芽させるために芽出し(催芽)をします。濡れむしろにくるみ、さらにビニールで包んで2日程度置く、風呂の残り湯に一晩漬けるなどして「はと胸状態」にします。

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図1 正しいはと胸状態

6 播種

適正な播種量、育苗日数で健苗を育成しましょう!

播種日の天候は出芽の善し悪しに影響するので、なるべく晴天の日に行いましょう。播種量は厚まきだと軟弱徒長になりやすく、苗いもちや植え痛みによる初期生育停滞等の原因となります。まず稚苗と中苗、どちらの苗を作るのかを考えてから、表2を参考に播種量を決めましょう。

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表2 苗の種類と主な特徴

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図2 播種量の参考(左:250g播種、右:140g播種)

注意

床土はJA等で販売している「育苗培土」を使用しましょう。粒の細かい水田の土やpHの高い畑の土は苗の生育不良、立枯病やムレ苗の発生などの障害の原因となりますので避けましょう。また育苗期間が25~35日の中苗を作る場合、暖地用の培土を使用すると育苗後半に肥切れが起こる可能性がありますので、肥料分の多い寒冷地用の培土を使用しましょう。

7 出芽

温度むらに注意し出芽をそろえましょう!

(1) 積み重ね出芽

角材の上に15~20枚重ねて積み、最下段と最上段に土を入れて灌水した箱を積み、保温マットやむしろとビニールで被覆して保温します。通常2~3日で出芽しますが、気温が低いと日数を要しますので、出芽が揃った箱から苗代に出して下さい。

注意

屋外の積み重ね出芽では、下の箱や苗箱の日陰側で出芽が遅れたケースがありました。気温が低い場合は積み重ねる苗箱の数を減らす、途中で苗箱を積み替える、日向側と日陰側を入れ替える等、温度むらの無いよう注意しましょう。

(2) 露地出芽

播種後すぐ苗代に出して出芽させる場合は、気温によって出芽の善し悪しが大きく左右されます。保温マット等で被覆し灌水と換気に注意して、晴天時には高温による焼けや病害の発生、曇天の低温時には出芽不揃いなどの障害が発生しやすくなるので注意しましょう。

8 育苗管理

こまめな温度、水管理で健苗を育成しましょう!

(1) 緑化期(本葉1葉期まで)

出芽が揃ったら、持ち上がった覆土を灌水して落ち着かせ、種子が露出している場合は土をかけます。昼は寒冷紗で被覆し、夜はさらにビニールで被覆し、気温の低下が予想されるときは、さらに保温マット等で被覆します。

特に注意

播種後すぐに、苗代に苗箱を広げ、冠水した状態で育苗した場合、発根が悪く、生育にムラができる場合がありました。原則、1葉期までは灌水せず、乾く場合は苗箱の様子をみて灌水しましょう。また、本葉2葉期以降、灌水する場合、根腐れをしないよう注意しましょう。

(2) 硬化期~田植え(本葉1葉期以降)

肥切れが見られるときは、落水し、1箱あたりチッ素成分で0.5g(硫安の場合2.5g)を0.5リットルの水に溶かして散布し、葉に付いた肥料は清水で洗い流して下さい。田植えが遅れて苗が伸びすぎるときは、灌水を控えぎみに管理し、田植え10日前頃に断根し、床面まで水を上げて下さい。

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表3 育苗期の温度管理の目安

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図3 目標とする稚苗中苗の草姿

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。