水稲の中間管理と病害虫対策

水稲の中間管理と病害虫対策

東松山農林振興センター

 

5月の埼玉県の天候は、高気圧と低気圧が交互に通過したことにより周期的に変化しました。

気温や降水量は平年並みの一方で、月間日照時間に関しては寄居・熊谷・鳩山の地点で平年と比べ多くなりました。

関東地方では、6月6日に平年より1日早く梅雨入りとなりましたが、梅雨明けは6月27日と平年より22日早くなりました。

6月21日気象庁発表の3か月予報では、「7月から9月の平均気温は平年より高い確率が50%・降水量は平年より多い確率が40%」となっています。

水稲においては分げつ期~幼穂形成期にあたる時期となり、中干しなどの水管理や追肥作業があります。

適切な水管理・施肥管理で環境に対応した稲作りを心掛けましょう。なお、昨年に引き続き、いもち病にも注意しましょう。

 
 

1 中干しについて

品種や坪あたりの植付株数にもよりますが、1株あたり20~30本程度の分げつ数を確保できたら中干しを行います。目安は、田面に小ひびが入る程度で期間としては7~10日です。

中干しは、①土中に酸素を送り込むことで根を健全に保ち、倒伏や病害を抑制する②窒素の吸収を抑え、無効な分げつを抑制する③田面を固くし、コンバイン等の作業性を高める、といった効果があります。過度の中干しは、かえって根を傷め養分吸収を阻害することになるので注意してください。

 

2 高温対策を考えた肥培管理

高温に耐える強い稲を作るために、収穫直前まで適正な栄養状態が維持できるような管理をしましょう。

基肥で一発肥料を施用していない場合は、適切な時期に穂肥を施用することで収量や品質を高めることができます。

穂肥の施用時期と施用量を決めるためには、幼穂の長さ、葉色を測定します(表1)。

埼玉中央農協が管内に展示ほを設置しており、穂肥施用の目安になる看板を設置しますので参考にしてください。なお、遅い穂肥はタンパク値上昇に伴う食味低下を招きますので、適切なタイミングでの施肥を心がけてください。

 

表1 穂肥施用時期の目安

 
 

3 出穂前後の水管理

幼穂形成期から穂ばらみ期にかけては稲が水を必要とする時期です。特に出穂前後1週間は水を必要とするため深水で管理しましょう。

出穂7日後から30日後までは、根の活性を保つため間断潅水を実施してください。(図1)

間断かん水を行う場合は1週間を1サイクルとし、湛水と断水を3~4日で切り替えましょう。その際、土壌にヒビが入らないよう注意してください。

 

図1 出穂前後の水管理

 
 

4 病害虫防除について

6月24日、埼玉県病害虫防除所の病害虫発生予報が発表されました。(表2)

移植時期により差がありますが、5月中旬までの移植におけるツマグロヨコバイの発生量が「やや多」との予報となっています。

ツマグロヨコバイは体長が4~6mm程度、雄成虫は体色が黄緑色で前翅の先端が黒色、雌成虫は全体が黄緑色で先端は黄褐色をしています。イネ萎縮病や黄萎病を媒介する害虫であり、発生量が多いと排泄物によりすす病を引き起こすこともあります。これらの影響を受けると不捻や登熟不良、品質低下につながる恐れがあるため、畦畔等の除草を行う他、発見した場合は薬剤を散布しましょう。

また、高温・少雨となった場合は斑点米カメムシ類への注意も必要です。発生すると穂を加害し斑点米が発生するため玄米品質の低下を招きます。

休耕田や畦畔等に生息し、イネの出穂に合わせて水田へ移動するため、出穂期の早いほ場へ被害が集中する可能性があります。

対策としては出穂2週間前までを目安にこまめに除草を行い、生息場所を減らしてください。(なお、出穂前後に畦畔除草をすると、畦畔のカメムシ類が水田に入ってきますので注意してください。)

発生が多い場合は、出穂期~乳熟期に2回カメムシ類対象の農薬を散布しましょう。

 

表2 令和4年度病害虫発生予報

 
 

なお、農薬を使用する際には、必ず使用農薬のラベルを確認して適正に使用するとともに周辺への飛散防止にも注意し安全性確保に努めてください。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。