農業の経営改善を考えましょう! ~経営改善の取組の手順~
農業の経営改善を考えましょう! ~経営改善の取組の手順~
昨年、一年間の農業経営は満足のいく結果でしたか。それとも・・・。
「一年の計は、元旦にあり」という諺があります。新しい年を迎えたこの時期に、昨年の農業経営の結果を見直し、経営安定や収益向上を目指し改善策を考えてみてはいかがでしょうか?
経営改善を進めるためには、次のような手順で、現状把握、経営の分析、問題点の洗い出し、改善策づくり、そして実践が大切です。
1 準備として現状を把握する。
まず、経営の現状を次の4つの点について把握しましょう。
①経営収支の状況
経営で一番大切なのが、この経営収支上の損益です。
農業の悪い例示として「どんぶり勘定」という言葉がよく使われてきましたが、簿記関係の記録や税務申告など財務諸表から、経営のお金の流れや収支状況を把握しておくことがとても大切です。
特に、売上金額等の収入、生産に要した経費額、販売・流通に係る経費、その他の諸費用、経営全体の収益状況などを把握しておきましょう。
②生産基盤と生産の状況
経営している耕地の面積や規模、生産している作型、作付け回数、収穫した農産物の量、販売した量などについて把握してください。その年の生産状況や効率性の把握に役立ちます。
③販売先・取引の条件
生産物を販売する取引先や取引の量、販売単価、取引額や手数料などについて確認します。収入の構造がつかめます。
④労働力及び機械装備の状況
生産に必要となった労働力の確保や過不足の状況、生産に係る機械等の整備状況、更新の必要性などもつかんでおきしょう。農業生産を考える上の基本要素です。
これらの項目について把握して現状分析を行いますが、時系列的な変化をつかむためには、経営収支は、複数年のデータがわかると、傾向をつかみやすくなります。
2 経営分析で問題点を探す。
次に、把握した情報から分析を行い、経営上の問題点を見つけ出します。
経営分析は、一般的に経営収支の状況と事業運営の状況の2つの視点から実施します。
経営収支の分析は、財務諸表(貸借対照表や損益計算書など)の数字を数式に当てはめ、得られた数値を経営指標値と比較し、お金の流れや財務状態を調べ、「収益性」、「効率性」、「安全性」、「生産性」、「成長性」、「損益分岐点分析」などを見極めて、損益上の問題点を見つけるために活用します。
事業運営の分析は、販売状況や取引先など外部環境と各生産品目の実績、労力や機械装備等の状況も含めて、経営としての内部環境を分析評価し、改善が必要な部分を探し出します。生産効率の判断は、生産する品目毎の指標値などと比較して見てください。
このように、現状の農業経営では、経営収支の状況はどこが良くてどこが悪いのか。生産や販売の成績では、どこが悪かったのか、問題点や原因を整理します。
実際、経営の収支と事業の運営は、車の両輪と同じ関係ですので、それぞれの問題は何が原因なのか、どこを改善すれば良いのかなど、関係性も考えて見てください。
なお、経営分析において比較する指標値等については、地域の優良な経営体の事例、目標とするモデルの数値などを参考にするか、公的機関が作成している指標値データを活用するのが良いでしょう。
参考に、パソコンを使って農業経営の簡易分析が行える情報が掲載されているURLを掲載しましたので興味が有ればご覧ください。
①農業経営指標分析プログラム
(農林水産省HP)
http://www.maff.go.jp/j/ninaite/shihyo/program.html
②農業経営改善のためのチェックリスト
(農林水産省HP)
http://www.maff.go.jp/j/ninaite/shihyo.html
③農業経営診断システム
(財団法人農林水産長期金融協会HP)
http://www.nokinkyo.or.jp/keiei/index.html
3 改善策を考え、実践します。
営分析によって見つけだした問題点を、どのように改善するかを組み立てるのが「改善策づくり」です。
経営の環境と内容がそれぞれ違うように、改善の取組やアプローチの仕方が違ってもかまいません。
経営分析から解った改善が必要な問題点に優先順位を付け、小さなことでも、出来ることから取り組んで行くことが大切です。
農業経営の将来の姿を描いて、短期、中期(5年)、長期(10年)の視点で進めていきましょう。
経営改善の取組で次のようなものがありますのでご紹介します。
事例①(主穀作経営)
生産規模から労力が不足していることがわかり、財務状況を確認し、雇用労力を確保して、生産体制の整備で経営改善を図った。
事例②(露地野菜経営)
経営分析の結果、栽培品目が多く収益性を圧迫していたことから、生産品目を絞り込み効率性を高め、収益の改善を図った。
次に「経営改善の実行サイクル」の図を載せましたのでご覧ください。
【経営改善の実行サイクル】
経営を取り巻く環境や社会の情勢は常に変化していきます。その中で、変化に対応して事業を継続させるため、収益の確保を考えることが経営者として必要な事です。現状に満足することなく、昨年より今年、今年より来年と、経営を発展させるために改善の取組への意識を持ち続けてください。
4 支援機関のサポートも活用しましょう!
今まで、経営改善に取り組む手順について記述してきましたが、専門的な知識が必要な場面もあるので、農協をはじめとする関係機関からの支援を受けることも検討してください。
埼玉県では、農業者の方々の経営改善を支援するため、国の「農業経営者サポート事業」を活用して、埼玉県農林公社が農業系団体、商工系団体、県普及組織など埼玉県内の19団体から構成する埼玉県農業経営相談所を平成30年5月14日に開設しました。
経営発展に意欲がある農業者の方々の規模拡大、雇用労力の活用、経営の継承、6次産業化の取組、経営の法人化など、個別の経営改善の取組について支援をさせて頂く組織です。
具体的には、埼玉県農業経営相談所の中に、経営戦略会議を設置し、中小企業診断士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士やデザイナーなど、各分野の専門家を配置して、農業者からの相談に対して、問題の解決に向けたアドバイスを行うサポートチームを編成して、必要な専門家を派遣します。
TEL 0493-23-8582
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。