小麦「さとのそら」の栽培ポイント
小麦「さとのそら」の栽培ポイント
東松山農林振興センター
埼玉県の小麦は、「農林61号」から、栽培性に優れた新品種「さとのそら」への品種転換が図られ、本年で4年目となります。排水対策や追肥の徹底、雑草対策など、過去3年間の経験を生かし、昨年を上回る品質・収量を目指しましょう。
図1 さとのそら栽培暦
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1 播種前作業
○土づくり
堆きゅう肥、稲わら等を施用し、地力維持に努めましょう。(堆きゅう肥を施用する場合は1t/10aを目安とします。)
2 施 肥
○基肥
基肥は窒素成分で8kg/10aとしましょう。
○追肥
出穂2週間前の4月上旬に窒素成分で4kg/10aを基本としましょう。
ただし、4月上旬の追肥作業が困難な場合は茎立ち直前(3月上中旬)に窒素成分で4kg/10aの追肥をしましょう。
○一発施肥
緩効性肥料を用いた一発施肥では基肥を窒素成分で10~12kg/10aを目安としましょう。
3 播 種
○播種時期
11月末までに播種するよう心掛けましょう。
○播種量
目安は5~7kg/10aです。「さとのそら」は「農林61号」に比べ、分げつを確保しやすい品種のため「農林61号」よりも少なくしましょう。ただし、播種時期が遅くなってしまった場合は分げつの確保が困難となってしまうため、播種量を多くすることで対応するようにしましょう。
○播種深度
発芽、分げつを確保するために、播種深度2~3cmを厳守しましょう。
4 明きょの設置
発芽不良や湿害、刈り取り作業の遅れを防ぐためには、降雨後の表面水の速やかな排出が重要です。このため、ほ場を均平にし、必ずほ場周囲及びほ場内5~10m間隔で排水溝を作りましょう。
5 踏 圧
麦が3葉期を過ぎたら実施しましょう。2週間以上の間隔をあけて、3回以上実施することが理想です。特に早播や暖冬年では、徒長を抑制するために踏圧回数を増やしましょう。
6 赤かび病防除
「さとのそら」は「農林61号」と同様に赤かび病抵抗性は中程度です。赤かび病が発生すると、かび毒の危険があり、販売できなくなってしまいます。開花期(出穂後7~10日)には必ず防除を実施しましょう。
7 収 穫
「さとのそら」の収穫適期は、出穂後50日程度です。適期を逃さないよう、早めの準備を心掛けましょう。また、収穫する際は朝露が乾いてから作業を始めるようにするとともに、天気予報を参考に計画的に収穫を行うようにしましょう。
☆カラスムギ対策について
カラスムギは、関東地域の麦類ほ場に蔓延しているイネ科の一年生雑草で、土壌処理剤による防除が難しい雑草であるとされています。
またカラスムギなどの雑草種子が収穫した小麦に混じると、調製作業でも抜き取ることができません。小麦の安定生産を目指すために、下図を参考にカラスムギ防除を徹底しましょう。
防除方法
①夏期湛水
カラスムギの種子は、湛水条件において、30~50日程度で容易に死滅するため、水稲作との輪作は、カラスムギの防除効果が高いとされています。
②プラウ等による深耕(25cm以上)
ほ場表面に存在するカラスムギ種子をプラウ耕による天地返しで地中深くに沈めることで、発芽を抑制することができます。
③不耕起管理及び④石灰窒素処理
不耕起管理や石灰窒素を行うことでカラスムギの発芽を促進させます。その後、小麦播種前に茎葉処理除草剤を使用することで、カラスムギの密度を下げることができます。
⑤休耕管理
1作休耕管理とし、ほ場にあるカラスムギ種子を発芽させます。その後カラスムギが出穂する前に茎葉処理除草剤を使用することで、密度を下げることができます。
もし麦立毛中にカラスムギがみられた場合は、発生量がわずかであっても結実前に手取りし、種子を落とさないようにすることを心がけましょう。
また今年、カラスムギが多発したほ場では、種子混入による小麦の品質低下を防ぐためにも、ほ場内の刈り分けを徹底しましょう。
★農薬散布をする場合は、散布方法等を各薬剤のラベル等で確認し、飛散に注意して安全使用に努めましょう。
図2 カラスムギの防除対策
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。