水稲の中間管理 ~暑さに負けない稲づくり~

水稲の中間管理 ~暑さに負けない稲づくり~

東松山農林振興センター

 

令和6年5月21日気象庁発表の関東甲信地方3か月予報によると、6月~8月の平均気温は高く、降水量はほぼ平年並の見込みです。

 

昨年は、6月から10月にかけて月平均気温が平年より高く、特に7月から9月は熊谷地方気象台の観測史上1位となる記録的な高温でした。そのため、肥切れや、全作期の水稲で登熟期間の高温による白未熟粒が多発し、検査等級が低下しました。

 

昨年の作柄と今年の気象予報を踏まえて、高温障害を受けにくい丈夫な稲を作る栽培のポイント(水管理や穂肥施用)を参考に、収量や品質の確保に努めましょう。

 

1 水管理

★生育に必要な水分と、根の活力維持に必要な酸素を供給しましょう。

 

(1)中干し

中干し以降の水管理は、図1をご覧ください。

 

中干しには、①過剰分げつの抑制、②土中への酸素供給、③ほ場のガス抜き、④根の健全化、⑤耐倒伏性の向上などの効果があります。

中干しは、おおよそ必要な分げつ数が確保されたら開始しましょう。期間は概ね1週間で、田面に小さな亀裂が入り、軽く足跡が付く程度とします。過度な中干しは根を傷め養分吸収を阻害することになるので避けましょう。

 

中干し後は、間断かん水を行います。

 

(2)出穂期前後

幼穂形成期から稲が水を必要とする時期です。特に、出穂期の前後1週間は水を切らさないように深水管理(5~7cm程度)を行いましょう。

 

(3)収穫まで

出穂後7日から30日までは、根の活性を保つために間断かん水を行いましょう。土壌にひびが入らないよう過度な乾燥に注意しましょう。

 

また、早期落水は白未熟粒や胴割米の発生を助長するため避けましょう。

 

 
 

2 穂肥施用

★良好な光合成、転流のために適正な栄養状態を維持しましょう。

 

基肥で一発肥料を施用していない場合は、適切な時期に穂肥を施用することで、籾数を増やし、稔実歩合を向上させ、収量や品質を高めることができます。

 

穂肥の施用時期と施用量を判断するためには、幼穂の長さと葉色を測定します(表1)。

特に、彩のかがやきでは葉色を見て行い、出穂15~10日前に葉色が4以下の場合は、さらに追肥(窒素施用量10aあたり2kg)を行いましょう。

 

また、一発肥料であっても、著しい高温条件下では、肥効が穂肥時期まで持たず、肥切れする場合があるので注意してください。

埼玉中央農協が管内に17か所の展示ほを設置し、穂肥施用の目安になる看板を設置するので参考にしてください。展示ほの場所は、各営農経済センター及び各支店窓口に確認してください。

 

 
 

3 病害虫防除

★暖冬・高温の影響による害虫被害の多発に注意しましょう。

 

(1)ウンカ類

県病害虫防除所で、麦類ほ場内のヒメトビウンカの生息密度を5月に調査した結果、ヒメトビウンカの生息密度は33.0頭/㎡で、過去10年で最も高く、平年(10.9頭/㎡)の約3倍の生息密度となりました。越冬幼虫のイネ縞葉枯病ウイルス保毒虫率は2.4%と過去10年で最も低いですが、逆に生息密度は最も高いです。

 

ウンカ類の防除は、育苗箱施用と本田防除が基本となります。コシヒカリ、キヌヒカリ等の縞葉枯病に弱い品種を栽培している場合は注意しましょう。

 

(2)カメムシ類

近年、斑点米カメムシ類のうちイネカメムシの発生が拡大傾向にあります。斑点米及び不稔米が発生し、多発した場合は収量・品質が低下します。

イネカメムシの特徴は、体長約13ミリメートル、黄褐色で背部両面に白色帯を持つやや細長いカメムシです。

 

7月頃から水田に飛来し、穂を加害するため、ほ場での発生状況を注意深く観察してください。イネカメムシの発生が確認された場合は、出穂期から穂揃期に1回目の薬剤散布、穂揃期の7~10日後に2回目の薬剤散布を行いましょう。

 

また、虫の生育場所を残さないため、収穫後は速やかに耕うんしましょう。

農薬を使用する際には、必ず使用農薬のラベルを確認して適正に使用するとともに、周辺への飛散防止にも注意してください。

 

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。