農作業安全について
農作業安全について
東松山農林振興センター
11月に入り、思ったより早く夕方は薄暗くなります。日出・日没の時間もこれまでと比べ短くなりました。
日頃行っている農作業にも、季節の変化に伴い柔軟な対応を求められる場面があります。
事故から身を守り、安全で効率的な農作業に従事できるよう危険性と対策を考えてみましょう。
農作業事故の実態と影響
国内の農作業における死亡事故件数は年間約300件発生しており(農林水産省農作業死亡事故調査による)、事故の内訳の60%以上がトラクターや耕うん機等の農業機械に関係するものです。
農業は最も危険な産業とも呼ばれており、次いで危険な建設業と比較し約3倍、就業人口10万人あたりの死亡事故件数も増加傾向にあります。
事故の影響は多方面に及び、①身心への影響(肉体的・精神的ダメージ)②経済への影響(治療費増・収入減)③周囲への影響(代替労働力の確保・周囲への負担増)があります。
以降では、農作業における事故の原因を①人為的②機械的③環境的の3つに大きく分け、それぞれの詳細と対策を説明します。
日頃の自身の作業に照らし合わせ、注意すべき点を考えてみましょう。
1 人為的要因
事故の当事者に関する要因です。身近な部分では、正しい服装を身に付ける、機械の正しい使用方法を理解する等、作業者自身の行動に由来するものです。
この要因は、適切に行動すれば防げる事故であることが多いため、対策として自身の農作業時の服装や危険を感じた場面など、振り返る機会を設けることが重要です。
また、作業前に当日行う作業の計画を立て、無理のないスケジュール管理を行うことも事故を防ぐ有効な対策になります。
2 機械的要因
使用している機械や器具に関する要因です。
機械の安全性の他、部品の摩耗具合や耐用年数等、定期的な点検や更新をすることで防げる要因が多くあります。
機械の購入時期や使用頻度、使用した際の状況等を記録に取っておけば、万が一の備えにもなります。
また、注意したいのは機械や器具の購入経路です。
他人からの譲渡や、中古を購入した場合は必ず取扱説明書を用意する他、購入時期や使用頻度、不具合の有無など事前に情報を把握することも重要です。
使用頻度が少なく不安を感じるようであれば、講習を受けることで適切な操作や取り扱い方法を身に付けることができます。
3 環境的要因
事故現場の作業環境に関する要因です。天候による影響や季節による気温・日照時間の変化がこれにあたります。
日没が早まることで周囲の見通しが悪くなる他、急な雨や霧による視界不良も事故の原因になります。
作業環境においては傾斜地の角度や水はけの良し悪しによる転倒の危険がある他、資材の配置場所により生じる死角も原因になります。
注意したいのは、事故が起きる場所はほ場や路上だけでなく、資材置き場や保管庫等どこでも発生することです。
これらの対策として、①通路は広く確保し、見通しを良くする②ほ場や順路等の地形や危険箇所を把握する③天候の変化をこまめに情報収集する等があります。
作業場所が広範囲にわたる場合は、作業する当事者だけではなく、周囲の人と協力し、集団で危険性と対策を情報共有しましょう。
事故を未然に防ぐために
農作業事故は程度により影響の大小は様々あるものの、機械に関連する事故は重症化につながりやすい傾向にあります。
また、当事者がどれだけ注意を払っても、周囲から巻き込まれてしまう可能性もあります。
より安全に作業するために、周囲に注意を払い周辺の変化に気がつく意識を持つ他、危険な場所に関する情報は周囲との情報共有も有効です。
表に「農作業時の安全確認事項」をまとめましたので、日頃の自身の作業と照らし合わせ、不安がある項目はその要因と対策を考えてみましょう。
忘れないでいただきたいのは、どのような対策も根底にあるのは作業者自身の意識です。
できることから少しずつ安全面へ気を配り、無理のない効率的な農作業に努めましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。