果樹の整枝・せん定を楽しみましょう
果樹の整枝・せん定を楽しみましょう
東松山農林振興センター
樹は幼木から成木の時期にかけて、将来の樹形の骨組みをつくります。それを整える作業が「整枝」です。
また、これに伴い不要な枝を整理する作業が「せん定」です。果樹栽培の場合は毎年せん定を適切に行えば、樹勢の回復や翌年の収穫量の増加につながります。
また、混みあった枝を減らすことで病害虫の発生・増殖を抑えることができます。
1 樹形について
どのような樹形にするかは、その果樹がどのように枝が伸びるかによって異なります。図1を参考に、せん定後の樹形をイメージしましょう。
・主幹形
頂芽を活かして自然に伸びる性質を活かした三角形の樹形です。
カキやクリでは、幼木期には主幹形で仕立て、成木になって光の透過が悪くなると変則主幹形か開心自然形に仕立て直します。
・変則主幹形
最初は縦長に仕立て、木が高くなったら主幹を途中で切り戻し、側枝を伸ばし樹形を低く保つ丸い形の樹形です。リンゴなどに用います。
・開心形
主幹の高さを60~90cmとし、2~4本の主枝を分枝させて、斜め上に伸ばし、各主枝に2~3本の亜主枝を配置した自然形仕立てと、主幹の高さを50cm以下とし、主枝をほぼ同じ高さから2~3本分枝させて杯状に開張させる杯状形があります。
前者はモモ、ウメ、スモモ、カンキツ類などで、後者はイチジク、リンゴ、ウメ、モモ、ビワなどで採用されます。
・株仕立て
ブルーベリー、スグリ、ラズベリーなどは、この樹形に仕立てます。
自然に伸ばすだけで整枝は特にしませんが、古枝等を間引いて風通しや日当たりを良くします。
・棚仕立て
キウイ、ブドウなどのツル性果樹に最適です。
2 結果習性について
新梢に花芽がつき花が咲き果実がなりますが、この果実が枝のどの部分に着果するか(花芽のつき方)を「結果習性」といいます。
果樹のせん定は結果習性を理解して実施しないと、花芽を全て摘除してしまい、翌年に花が全く咲かないようなことも起こります。
結果習性は大きく「結果母枝型」と「結果枝型」の2パターンに分けられます(図2)。
カキやクリ等は春に伸びた枝に花芽が着生し、実をならせる結果母枝型で、その他は前年に伸びた枝に花芽が着生し、実をならせる結果枝型です。
結果母枝型の場合は、冬季せん定時に枝先を切ってしまうと、春先に実をならせる新梢が発生しなくなってしまいます。
枝の先端はその枝を伸ばしたいときは切り、着果させたいときは切らないようにしてください。
3 せん定の基本
整枝・せん定のやり方には「切り返しせん定」と「間引きせん定」があります。目的に応じて使い分けていきましょう。
「枝の途中」から枝を切り落とすことを、切り返しせん定といいます。おもに木の勢いを回復させたいときに用いるせん定方法です。
元気のない枝を、枝の途中から切り落とすことで木に刺激が加わり勢いが増すことで枝がより大きく成長してくれます。
一方で、間引きせん定は「枝の元」から切り落とします。この方法は、栽培環境を整える際に使います。
枝の密集しているところを中心に、枝を枝元から切り落とすことで風通しが良くなり、病害虫の発生を防ぐことができます。また枝の量が減ることで作業しやすくなるという利点もあります。
4 せん定の手順
せん定を始める前に、樹全体を見渡し、主枝と亜主枝の位置を確認します。
樹形や枝の混み具合など樹木全体を観察しましょう。基本的に整枝・せん定は、太い枝から着手すると作業がしやすくなります。
手順としては、まず骨組みとなる主枝を2~3本決め、斜め外側に開きます。その他の主枝候補枝は間引きせん定します。
枝のボリュームが多い部分を抑えながら、主枝の配置を決めましょう。主枝の先端は強く伸びるように3分の2程度を残して切り返しせん定します。
次に主枝から伸びた枝で亜主枝を主枝1本につき、1、2本配置します。
主枝・亜主枝の配置を決めてから、最後に側枝を配置します。果実をならせる枝が混みあっているところでは、その中でも古い枝を主枝・亜主枝の元まで切り戻します。
側枝は周りの枝配置を考慮しながら、混みあわない程度に枝の本数を調整しましょう。
真上に徒長した枝や、日陰をつくる内向きの枝、勢いのない下向きの枝を基部から間引き、なるべく横向きの枝を残します。
5 せん定の時期
落葉果樹の場合は、落葉後の12月頃から翌年2月までには済ませるようにしましょう。
みかんなどの常緑果樹の場合は、春の芽吹き前が適期になります。
6 その他の注意点
大きな枝を切り落とすと、切り口から病原菌が侵入し、枯れ込む危険があります。切り落とす枝の基部は長く残さず、切り口は平滑にするようにしましょう。
せん定後は、切り口にトップジンMペーストを塗布しましょう。また、病害虫は落ち葉などで越冬するため、ほ場の外か土中に埋めるなどして処分をしましょう。
※農薬を使用する際はラベルをよく読み、記載されている使用基準を順守しましょう。
図1 果樹の樹形
図2 果樹の結果習性
引用:JA尾張中央11月の果樹だより
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。