果菜苗の作り方と選び方 野菜作りは苗半作

果菜苗の作り方と選び方 野菜作りは苗半作

園芸研究家●成松次郎

 

 

苗作り中の管理の良しあしが、植え付け後の生育に大きく影響します。
果菜類では、苗作り中に花芽分化が起こり、栄養生長と生殖生長が同時に進みます。
葉菜類では種まきの時期によってはとう立ちが問題となり、収穫の成否に影響します。
 
 

[育苗用土の条件]
 
限られた用土で良い苗を作るためには、良い用土(培土)が必要です。
 
・水はけ(排水性)が良く、水持ち(保水性)、肥持ちに優れること。

・生育に必要な肥料養分をバランス良く含み、酸度は弱酸性〜中性(pH5・8~7・0)であること。

・病原菌、害虫、雑草種子を含んでいないこと。

・土質が均一で安価、しかも入手しやすいこと。
 
なお、良質な床土の材料には落ち葉、稲わらなどの有機物が必要ですが、身近にない場合や少量の苗作りでは、市販品の利用が簡便です。
これらの用土は、組成が均一で病害虫の心配がありません。
 
 

[苗作り中の管理]
 
(1)温度
果菜類では生長促進と花芽を作るために、やや高温で管理します。
果菜類の苗作りは気温の低い季節となるので、暖かい場所やトンネル内の育苗にします(表1)。
 
 

(2)光
苗作りでは十分な光が必要ですが、春夏の苗作りでは光が強過ぎ、日焼けを起こしたり、しおれが生じる場合は、寒冷しゃなどで遮光します。
生育に応じて苗間を広く取り、理想的には互いに葉先が触れ合う程度に広い間隔を取ると良いでしょう。
 
 

(3)水分
セルトレーやポット育苗では用土が少ないため、頻繁に灌水(かんすい)が必要になります。
用土の乾き具合を灌水の目安にしますが、ナス、ピーマン、キュウリでは灌水量はやや多めに、メロン、トマトではやや少なめに灌水します。
しかし、苗作りの後半には、苗の徒長を抑えるためにやや乾燥気味に管理します。
 
 

(4)慣らし
植え付け前に外気に慣らすことを馴化(じゅんか。※順化とも)といいます。
手入れの行き届いた環境から気象の影響の大きい畑に植え付けるため、1週間前くらいから、土を乾き気味にして、十分に光を当ててやります。
 
 

(5)植え付け
果菜類は晩霜の恐れのない時期(平均気温16、17度以上)を目安に、逆算して播種(はしゅ)日を決めます(表2)。
 
 

[良い苗の選び方]

 良い苗を購入するには、次の点に注意して選びましょう。
 
・子葉が付き、茎が太く、節間が詰まって下葉は厚く、緑が濃くがっしりしているもの。

・病気や害虫が付いていないもの。

・トマトやナスでは、膨らんでいるつぼみが見えるもの。

・トマト、キュウリ、ナスなどの接ぎ木苗は病気に強い台木が使われているので、値段が少々高くても作りやすい。

・ポット苗では根が発達し、根鉢が完成しているもの(図1)。
 
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。
 
 

 

 

イラスト:小林裕美子

一覧へ

【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。