パイプハウスを建てて、冬でも野菜を作ろう

パイプハウスを建てて、冬でも野菜を作ろう

園芸研究家●成松次郎

 

 

パイプハウス(以下、ハウス)は低コストで管理も容易です。
 
冬でも収穫ができ、育苗に利用して「早出し栽培」もできるなど、多くのメリットがあります。
 
 
[ハウス栽培のメリット]
 
(1)端境期に収穫できる
ハウス栽培は、露地栽培よりも暖かい環境で野菜を育てられるため、収穫期を前倒しにする「早出し栽培」はもちろん、寒くなってから収穫する「抑制栽培」もできます。

 

(2)安定生産ができる
露地栽培では、雨による泥跳ねで野菜が汚れる、病害が広がる、トマトでは裂果や腐敗を招くのに対し、ハウスには露地栽培にはない雨よけ効果があります。

 

(3)良い環境で作業ができる
雨や風が防げるので天候にあまり左右されず農作業ができ、作業小屋としても利用できます。暑いときは、ブルーシートなどをかぶせて日陰を作りましょう。

 

(4)ハウスで育苗する
ハウスは温度管理しやすく、育苗に適した環境になるため生育が安定します。
さらにトンネルで覆うと保温効果が高まり、電熱温床マットを利用すれば、育苗する野菜の種類を増やすことができます。

 
 

[ハウスを建てる]
 
(1)ハウスの構造
ハウスの容積が小さいほど温度変化が大きく、容積が大きいほど温度変化が緩やかなので、大きいハウスは温度管理が容易です。
棟高(ハウス頂点の高さ)と軒高(ハウスの左右の柱の高さ)の差が大きいと、積雪がある地域では雪が落ちやすくなります。降雪や強風が予測されるときは、筋交いを通してハウスの強度を上げます(図1)。
 

(2)建てる場所
南北建てと東西建てがあり、南北建ては日射が平均的になり、管理がしやすいので一般的です。野菜の生育に欠かせない光合成は、主に午前に行われるため、朝日がよく当たる場所に設置することが大切です。

 

(3)被覆素材
被覆素材には「農ビ(塩化ビニールフィルム)」が多く使われてきましたが、最近では「農PО(ポリオレフィン系フィルム)」の使用が増えています。一般的に、農ビに比べ農PОは「保温性が低い」「こすれに弱い」「裂けにくい」「べたつかない」などの特徴がありますが、栽培環境や野菜の種類に合った素材を選びましょう(図2)。

 
 
[栽培管理のポイント]
 

(1)春と秋は小まめに開け閉めを
ハウス内が高温になり過ぎると野菜の生育に良くありません。日中は急激な温度変化を避けるため、小まめに換気して、低めの温度を維持します。

 

(2)広がりやすい害虫に要注意
ハウスの中では、ダニなどの害虫が出ると広がるのが早いのが難点です。
小まめに見回ることと、見つけたらすぐに防除することが大切です。予防には、日当たりと風通しを良くし、室内の過湿、乾燥を改善しましょう。

 

(3)ハウス内の空間を立体的に使う

野菜の種類により草丈の高低、植え方によって栽培に必要な空間は異なるので、陰を作らない組み合わせで、立体的に空間を活用しましょう。

 
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。

 
 
 


 
 

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。