いちご定植前後の管理と高温対策について

いちご定植前後の管理と高温対策について

東松山農林振興センター

 

9月に入ると、いちごの定植が始まります。長い収穫期間を支える株に育てるためには、活着を促進し、「根張り」をよくすることが重要です。

また、近年では定植前後の高温により花芽分化が遅れ、収穫開始の遅れや収量が低下する傾向がみられています。

次の内容を参考に、定植前後の管理を再確認するとともに、高温対策を行いましょう。

 

1 高温対策が特に重要な時期

いちご栽培で高温対策が特に重要な時期は次のとおりです。日中は遮光・遮熱資材や循環扇等を活用し、気温の上昇を抑えましょう。

 

(1)育苗期後半(8月以降)

第1花房の花芽分化に影響。

 

(2)定植後~第1花房の出蕾時期頃

第2花房の花芽分化に影響。

 

(3)春先以降(2月以降)

果実品質に影響。

 

2 定植直前の病害虫対策

(1)ハウス内外の除草

・雑草は、病害虫の棲み処になります。ハウスの周辺部や、暖房機周りなどの除草を行いましょう。

・防草シートをハウス周辺に張ると、除草の手間を減らすことができます。

 

(2)ハダニ類防除

・ハウス内に「持ち込まない」ことが重要です。事前に、ハダニ類の対策を行いましょう。

・モベントフロアブルの灌注処理(表)は、苗が薬剤を吸収する時間を確保するため、定植3~5日前に行うのがおすすめです。

・高濃度炭酸ガス処理は、高濃度(50~60%以上)の炭酸ガスで24時間処理を行います。卵、幼虫、成虫の全てのステージのハダニ類に効果があります。

 


 

3 定植時の管理

(1)苗の選別・植え付け

・健全な苗を厳選し、本ぽに病害虫を持ち込まないようにしましょう。

・元気な下葉は除去しなくてもいいですが、黄化した葉や病葉は除去してください。

・根は、花房が出る方向に多く伸長します。例えば、外成りの2条植えの場合、苗は畝の中心に寄せて植えて十分に根を張らせる場所を確保しましょう(図1)。

・新しい根はクラウン部(図2)から発生します。クラウン部付近が地表面に一致する深さ(写真2)で植え付け、未展開葉(芯葉)が埋もれないようにしましょう。

 
浅植え(写真1)や深植え(写真3)は、葉の展開や収穫開始が遅れる原因になります。
 

 

 

(2)植え付け後のかん水で活着促進

・定植後約1週間は、新しい根を張らせるために株元かん水を行い、苗の根鉢との隙間を埋めて土によく馴染ませましょう。

・クラウン部付近の土壌表面が常に湿っている状態を保つように、少量ずつこまめなかん水を行いましょう。

 

 

4 定植後の管理

(1)ハウス内の高温対策

・いちごの生育適温は、気温20~25℃、地温18~22℃です。

・気温が30℃を超えると極端に生育が衰えます。また、第2花房を適期に分化させるためにも、できる限り高温にならないよう、換気を十分行い、循環扇や遮光資材などを活用してハウス内の温度上昇を抑えましょう。

(2)病害虫対策

・チョウ目、ハダニ類、うどんこ病等の発生状況に注意し、発生初期に防除を行ってください。

・特に、昨年は秋頃にチョウ目害虫の発生が多く、展開葉や芯葉への食害が散見されました。今年も発生が多くなると予想されるため、成虫の飛び込みがないか、ほ場を観察して注意してください。

・栽培期間中も、ハウス内外に雑草が繁茂しないように管理しましょう。

(3)芽数・ランナーの整理

・年内は1芽か2芽で管理し、年明け以降の過繁茂を防ぎましょう。

・ランナーをこまめに除去し、草勢低下を防ぎましょう。

・1芽あたりの葉数を7枚以上確保し、草勢維持や果実糖度の向上に努めましょう。

(4)マルチ張り

・目安の時期は、最低気温15℃以下が3日以上続く頃です。

・マルチ張りの時期が高温だったり、第2花房の花芽分化前にマルチをすると、第2花房の花芽分化が阻害されて中休みの原因となります。

 

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。