農作物の獣害対策について
農作物の獣害対策について
東松山農林振興センター
令和2年度の埼玉県の鳥獣による被害は8184万円で、ここ数年は概ね1億円程度で推移しています。種類別では、特にアライグマ、イノシシ、シカによる被害が多くなっています。
鳥獣害対策のポイントは、①ほ場への侵入防止柵設置、②餌になる農作物残さ、未収穫果樹をなくす、③野生動物が身を隠せる雑草が繁茂した遊休農地などの場所を減らす、④野生動物の捕獲による個体数管理です。
野生動物の捕獲は、対策の一つではありますが、他の対策を行わなければ、被害を減らすことはできません。餌があり、隠れ場所がある環境は、野生動物を引き寄せたり、頭数を増やす原因にもなります。野生動物にとっては、ほ場の農作物も、農作物残さも同じ餌なので、侵入防止対策をしていないほ場の農作物は、農作物残さとともに野生動物の餌となってしまいます。
対策を成功させるには、動物の習性を理解し、正しい対策を継続してすることが重要です。
侵入防止柵の設置について
獣害対策のネットやトタン、ワイヤーメッシュなどの物理柵の場合、動物が最初に狙うのは、地面と柵の隙間です。柵に沿って周囲をまわり、侵入できる隙間がないか探すので、裾を埋めたりピンでとめるなど、地面との隙間を作らないようにしましょう。また、柵周辺の草管理を行うことで、ほ場周辺に野生動物の隠れ場所をなくすことも大切です。
電気柵は、野生動物に「危険」であることを学習させ、ほ場に近づかなくするための、有効な手段です。
「危険」であることを学習させるためには、動物がいつ来てもいいように、電気柵設置中は常に通電している必要があります。そのためには、次のことが大切です。
・使用前に通電するか確認する。
・電気柵を設置している間は、一日中通電しておく。
・雑草やつる植物が絡みつくと漏電し、効果が落ちるので、雑草管理をきちんとする。
・収穫が終わり、必要なくなったら片付ける。
また、動物の種類によって効果的な電線の張り方が異なるので、動物の種類によって張る高さ、段数を変えることも大切です。
なお、使用方法を誤ると人に対する危険が伴うものでもあるので、電気柵を設置するときは、日本電気柵協議会のHP等を確認の上、適切な設置を心掛けましょう。
動物の種類による侵入防止柵の設置方法
動物によって、行動の特性や対策が異なります。敵を知り、効果的な対策を行いましょう。
イノシシ
①鼻先で何でもころがしたい性格で、隙間を見つけると鼻先で広げて侵入しようとします。防護柵ネットの裾や、電気柵の雑草対策シートの押さえに、石などを使うと転がされてしまうので、ピンで固定するなど、他の方法で押さえるようにしましょう(図1)
(図1)
②物理柵では、トタンやワイヤーメッシュ(目合い10センチ、高さは120センチ)が有効です。目合いが大きいと幼獣が入り込み、成獣も後を追って入り込もうとするので注意しましょう。
③電気柵の電線は、20センチ間隔で2段とします。30センチ間隔だと、侵入されるので注意しましょう。(図2)
(図2)
シカ
①もともと平坦地に暮らす動物で、餌と隠れ場所があれば、山のそばでなくても暮らせます。
②夜行性というわけではなく、安全であれば昼間も活動します。
③侵入するのに最初に狙うのは地面との隙間です。裾をしっかり止める方法のほか、たらしをつけるのも有効です。(図3)
(図3)
④ジャンプ力があるので、高さ150センチ以上の金網フェンス等が効果的です。対象がシカだけの場合は、物理柵のみで十分です。
⑤電線のみの電気柵だと、侵入防止効果が低くなります。電気柵の後ろに防鳥ネットなどを張って電線の間の空間をなくすと効果的です。(図4)
(図4)
アライグマ・ハクビシン
①登るのが得意です。物理柵のみでは不十分なので、電気柵を利用しましょう。
②5センチより広い隙間があるとくぐり抜ける恐れがあります。電気柵の電気に確実に触れさせるには、「楽落くん」などの設置が有効です。(写真1 提供:埼玉県農業技術研究センター)
(写真1)
設置方法については、下記HPでご確認ください。
埼玉県農業技術研究センター鳥獣害防除担当
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/shin-choujuugai.html
③アライグマの捕獲について
野生動物の捕獲には、原則「狩猟免許」が必要ですが、特定外来生物のアライグマは、捕獲従事者養成研修を受講し、従事者登録され、従事者証の発行を受けると捕獲することができます。
※イラストは秩父地域鳥獣害対策協議会資料より引用しました。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。