落葉果樹の今年の管理を振り返ってみましょう

落葉果樹の今年の管理を振り返ってみましょう

東松山農林振興センター

 

落葉果樹(夏~秋に果実を実らせ秋~冬になると完全に落葉する果樹)においては、落葉期の栄養状態が翌春の生育につながります。

収穫期以降も葉を保護し、老化を防ぎ、同化作用を盛んにさせ、貯蔵養分を十分に蓄積させておくことが大切で、冬の凍害予防にもなります。

そこで、今年の栽培管理を振り返ってみましょう。

 
 

(1)樹勢の診断について

今年の管理の良否を考える基準として、落葉果樹の場合は落葉の状態を良く観察することで、樹勢を把握することができます。

 

★良好

10月下旬以降、気温が15℃になる頃に葉色があせ、日当たりのよい部分に赤みが強く出て、紅葉が急速に進みます。

11月中下旬の約2週間で一気に落葉します。

 

★不良
①極端に早く落葉してしまう。

この場合、根群に問題がある可能性や病害虫による影響も考えられます。

 

②12月になっても葉がついている、徒長枝の先端部の葉が枯死したままついている。

この場合、窒素の過剰や遅効きの可能性があります。

その場合は、秋に行う基肥の施肥量の見直しをしましょう。

 
 

(2)施肥について

果樹は同一場所で数十年間の長い期間果実生産を行うため、土壌条件の良否により収量・品質に大きな差がでてきますので、施肥基準を把握することが大切です。

肥料は施す時期によって、基肥、追肥、礼肥の3回に分けて施用するのが基本です(表1)。

 
 

表1 施肥の種類
 
 

落葉果樹において樹勢を回復させるためには、基肥によってバランスの良い土壌に向上・維持させていくことが必要となります。

基肥は生育期間を通じて養分を吸収させるための肥料で、枝や葉、花芽、幼果の生長を促します。

根が活動を開始する2月上旬頃に吸収され始め、収穫時期の頃に肥料が吸収されつくすのが最適な量です。

落葉果樹の場合は落葉後から翌春の芽吹き前までに施します。

 

また、肥料は多くやれば良いというものではなく、特に秋肥を多くやりすぎると根が栄養分を吸収しきれず、肥料焼けを起こし、冬期に凍害を受けやすくなる場合があります。

土壌診断を行い、今年の樹の状態を観察し、来年に向けた適正な施肥計画を作りましょう。

 
 

(3)着果量について

果樹には、果実がたくさんなる「成り年・表年」と果実が少ししかならない「不成り年・裏年」を繰り返す「隔年結果」という習性があります。

特にリンゴ、カキなどでは顕著に発生します。着果量が極端に増加すると樹に負担が多くかかります。

 

果樹は、「今年分の果実の成長」と「来年の花の準備」が同時に行われています。

そこで、摘蕾・摘果を行って着果量をコントロールすることが、毎年安定した収量につながります。

 
 

(4)せん定について

永年性である果樹は、将来の樹形の骨組みを作る必要があります。

そのために枝を整える「整枝」作業と、これに伴い不要な枝を整理する「せん定」作業を行う必要があります。

果樹栽培の場合は毎年せん定を適切に行えば、樹勢の回復や翌年の収穫量の増加につながります。

また、混みあった枝を減らすことで病害虫の発生を抑える効果もあります。

 

せん定作業の際は、枝のどこに実(花芽)が付くかという「結果習性」を理解することが必要です。

結果習性は大きく「結果母枝型」と「結果枝型」の2パターンに分けられます(図1)。

 
 

図1 果樹の結果習性
 
 

カキやクリ等は春に伸びた枝に花芽が着生し、実をならせる結果母枝型で、結果枝型は前年に伸びた枝に花芽が着生し、実を成らせます。

結果母枝型の場合は、冬期せん定時に枝先を切ってしまうと、春先に実をならせる新梢が発生しなくなってしまいます。

 

枝の先端はその枝を伸ばしたいときは切り、着果させたいときは切らないようにしてください。

果樹のせん定作業は、基本的に落葉後12月~2月に行います。

また枯れ込み等の防止のため、切り口には必ず保護剤を塗るようにしましょう。

 
 

(5)病害虫防除について

病害虫を予防するには、日々の観察で早めに発見することや、せん定や整枝によって株内の風通しと日当たりを保つことが大切です。

薬剤散布をする際は、風のない穏やかな日にかけムラが起こらないよう、丁寧に散布することが大切です。

 

また、冬期の防除作業によって樹体上で越冬する病害虫の密度を低下させましょう。

基本となるのは、カイガラムシ類等を防除する機械油(マシン油)乳剤と、病気と害虫を同時防除できる石灰硫黄合剤の散布です。

 

いずれも使用時期は樹の休眠期で、新芽が動く前までに散布します。

機械油(マシン油)乳剤を散布した後に石灰硫黄合剤を散布する場合は、1カ月以上間隔をあけるようにしましょう。

 
 

表2 主な冬期の病害虫防除薬剤
 
 

※農薬を使用する際は、ラベルや袋に表示された使用基準を必ず守って使用しましょう。

使用時は、農薬の飛散防止に努め、農薬の使用記録をつけましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。