緑肥作物を上手に使いましょう

緑肥作物を上手に使いましょう

東松山農林振興センター

 

農作物の栽培に土づくりは重要です。土づくりの方法として、堆肥の利用のほか、緑肥作物の利用についても考えてみましょう。

 
 

緑肥作物の効果

緑肥作物の効果は、緑肥作物の種類や品種によって様々です。

 

〇土壌の物理性の改善

緑肥作物の土壌へのすき込みにより粗大有機物が入り、土壌の団粒化が図られます(団粒構造)。これにより、土壌の保水性や排水性が改善します。

 

〇土壌の化学性の改善

投入された粗大有機物は微生物の働きにより分解され、腐植を形成します。腐植は肥料成分を吸着し、肥料成分の流亡を防ぎます(塩基置換容量の向上)。

ハウスなど塩類集積の進んだほ場において、緑肥作物に塩類を吸収させ、緑肥作物をほ場外に搬出する方法(クリーニングクロップ)があります。

 

〇土壌の生物性の改善

有機物の供給や土壌の団粒化により、土壌微生物のエサやすみかが増加し、幅広く性質の異なる土壌微生物が見られるようになります。

また、緑肥作物の導入は、輪作作物の種類を増やすことにもなり、連作障害の回避にもつながります。

さらに、緑肥の種類によっては、有害センチュウを抑制するもの(対抗植物)や、アブラナ科野菜での根こぶ病対策になるもの(おとり植物)、近くに栽培することで互いの生長に良い影響を与えるもの(コンパニオンプランツ)、天敵のすみかを供給するもの(バンカープランツ、障壁作物)などもあります。

 

〇肥料成分の供給

マメ科の緑肥作物は、根に共生する根粒菌の働きにより、空気中の窒素を固定し、養分として利用することができます。これを土壌にすき込むことで窒素源として利用することができます。

また、土壌中の肥料成分は雨などにより流れてしまいます(溶脱)。緑肥作物を栽培することでほ場に残った肥料成分を吸収させ、すき込むことにより再供給することもできます。

 

〇環境対策

緑肥作物には、裸地での土壌浸食防止効果や緑肥作物を刈り倒してマルチとしての活用、作物ほ場の周囲に背の高くなる緑肥作物を栽培し農薬などのドリフトガードとしての活用などもあります。

 

緑肥作物の利用上の注意点

 
 

〇緑肥作物の選定

緑肥作物は多くの種類があり、導入効果と栽培する作物の時期にあったものを選ぶ必要があります。

 

 

〇栽培方法

緑肥作物の種類により、播種量や播種適期が異なります。播種方法は播種機を使用するか、散播して浅くロータリをかけて覆土するなどがあります。基本的に無施肥での栽培となりますが、土壌養分が不足している場合は、施肥をする必要があります。

 

〇すき込み時期

緑肥作物を大きくすれば、より多くの有機物をすき込むことができます。しかし、生育が進むと窒素に対する炭素の割合(C/N比)が高くなり、土壌中での分解に時間がかかるとともに、次作での肥料効果も小さくなります。分解時の窒素の取り込みにより、窒素不足(窒素飢餓)が起こる場合があります。

また、緑肥作物が大きくなりすぎると茎が硬くなり、すき込みが難しくなることがあります。緑肥作物を結実させると、雑草化することもあり、注意する必要があります。

一般的に、マメ科の緑肥作物では開花始期、イネ科では出穂始期までにすき込みます。

 

〇すき込み方法

トラクタのロータリ耕を数回行いすき込みます。モアなどで事前に粉砕しておくとロータリに絡みにくくなり、作業効率がよくなります。プラウを利用した反転すき込みの方法もあります。

すき込み後の腐熟期間は、緑肥作物の種類・生育量、すき込み時の気温などによって違ってきます。

腐熟期間は、気温の高い時期ですき込みから1か月程度が目安です。腐熟期間が短いと作物の発芽や生育に障害が出るなど植え傷みが起きる場合があります。すき込み後作付けまでの期間が長くなると、窒素成分が流れやすくなります。

 

主な緑肥作物の種類と特徴

〇イネ科作物

 

ソルガム(ソルゴー)

高温を好む作物で、播種時期は5月から8月になります。播種後、1~2か月くらいですき込み時期になります。生育が旺盛で生育が進むほど有機物量は増えますが、C/N比が高くなり、分解に時間がかかるようになります。

ハウス栽培でのクリーニングクロップとしての利用も可能です。障壁作物として利用する場合は晩生で、穂が出にくい品種を選びます。

 

エンバク

播種時期は春まき(3~5月)の他、秋まき(9~11月)で越冬させる作型もあります。すき込みまでの生育期間は、春まきで2か月ほどですが、肥料効果や雑草化を防ぐために、出穂直前にすき込むのが効果的です。

種類によっては、キタネグサレセンチュウの抑制効果があるものもあります。

 

ライムギ

酸性土壌、乾燥土壌に強いのが特徴です。耐湿性はあまり強くありません。耐寒性が強いので越冬栽培も可能です。すき込み量が多く、有機物供給に適していますが、地力の低いほ場では後作に窒素飢餓が出やすいので注意が必要です。肥効を考えた場合、草丈30cmぐらいですき込みます。

播種時期は春まきで3~5月、秋まき9~11月(翌春すき込み)となります。

 

ギニアグラス

ネコブセンチュウ類に抑制効果があるのが特徴です。キタネグサレセンチュウにもある程度効果があります。

播種時期は6~8月、すき込み時期は草丈1.5m~出穂はじめ(播種後50~70日)になります。出穂後は雑草化の可能性があるので注意が必要です。ハウスのクリーニングクロップとしても利用が可能です。

 

〇マメ科作物

 

ヘアリーベッチ

被覆性が高く、雑草抑制効果が高いです。湿害には弱いので注意が必要です。

播種時期は9~11月で、すき込み時期は翌春の4月ごろになります。つる性のため、細断してからすき込むのが基本ですが、草丈が低ければ、ロータリ耕ですき込めます。

 

クロタラリア

亜熱帯系の緑肥作物です。細葉系統と丸葉系統があり、細葉系統は生育が旺盛ですが、生育が進むと茎が木化しすき込みにくくなるので注意が必要です。サツマイモネコブセンチュウの抑制効果があり、品種によっては他のネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類に効果のあるものもあります。

播種時期は5~7月ごろの十分に暖かくなったころで、は種後2か月くらいですき込みます。小型トラクタではやや早めにすき込みます。

 

セスバニア

直根性で根が深く入るため、下層土の透水性を高めます。

高温を好むので、播種時期は6~7月となります。播種時に根粒菌の種子紛衣が必要です。すき込み時期は播種後2か月ぐらいです。すき込み時期が遅くなると茎が硬化するので注意が必要です。

※各緑肥作物の特徴や栽培方法については、メーカーのカタログ等を参考にしてください。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。