収穫時の生育を左右する! いちご定植前後の管理

収穫時の生育を左右する! いちご定植前後の管理

東松山農林振興センター

 

9月に入ると、いちごの定植が始まります。長い収穫期間を支える株に育てるためには、「根張り」が重要です。

収穫開始までに、いかに作物にストレスを与えず「根を十分に張らせることができるか」が管理のポイントになります。

次の内容を参考に、定植前後の管理を再確認しましょう。

 

1 定植前の準備・管理

(1)病害虫対策

・ハウス内外の除草

雑草は、害虫の棲み処になります。定植1週間前までに、ハウスの「周囲・暖房機の下・隅」の除草を行いましょう。

また、防草シートをハウス周辺に張ると、除草の手間を減らすことができます。

 

・苗への防除(表参照)

ハウス内に病害虫を「持ち込まない」ことが重要です。事前に、ハダニ対策を行いましょう。

基本の対策として、気門封鎖剤を使用して成虫の密度を減らしましょう。モベントフロアブルの潅注処理は、苗が薬剤を吸収する時間を確保するため、定植10~14日前までに行ってください。

 
表 定植前のハダニ類防除(例)

 

【技術紹介】

高濃度炭酸ガス処理(写真1)

この技術は、高濃度(60%)の炭酸ガスでくん蒸処理を行い、ハダニ類を防除するものです。薬剤抵抗性を持ったハダニ類に有効であり、薬剤抵抗性を発達させるリスクがありません。

利用にはシステムと炭酸ガスの購入が必要になります。興味のある方は、ご相談ください。

 
写真1 処理装置と炭酸ガスのボンベ
 

 

(2)かん水過多に注意

日中が暑いため、かん水量が増える時期ですが、多すぎると根腐れや肥料切れの原因になります。

かん水量を増やしたい場合は、早朝と夕方の比較的涼しい時間帯の2回に分けて行いましょう。一度に与える水の量は、ポット穴から水が落ちない量としてください。

葉が濡れる時間が長いと病気を誘発します。風通しよく管理しましょう。

 

2 定植直前・当日の管理

(1)苗の仕上げ

しっかりと充実した苗を選びましょう。下葉、病葉は取り除き、定植時の葉は2.5~3.5枚にしてください。

葉色が淡く、肥料が切れているような場合は、薄めの液肥を与えて活着時の体力をつけましょう。

 

(2)苗を植える位置(図1)

根は、花房が出る方向に多く伸長します。十分に根を張らせる場所を確保するため、苗は畝の中心に寄せて植えましょう。

 
図1 苗の植え付け位置

 

(3)苗の植え付け深さ

新しい根はクラウン部(図2)から発生します。適正な植付け深さ(写真3)で、クラウン部と畝の土を密着させましょう。

植えた後も、クラウン部に土寄せを行い、根がのびやすい環境を整えてあげましょう。

 
図2 クラウン部
 

 
写真3 適正な植付け深さ
 

 

浅植え(写真2)や深植え(写真4)は、葉の展開や収穫開始が遅れる原因になります。

 
写真2 浅植え(クラウン部露出)
 

 
写真4 深植え
 

 

(4)植付け後の水やり

発根には水が必要です。

定植後1週間は、こまめに株元にかん水を行いましょう。

 

3 活着の見極め

定植後に展開した葉が、①定植時の葉より大きく、②草丈が高くなれば活着した証です。

また、新しい葉の展開の目安は、約10日に1枚です。定植後の日数から数えて、定植後に展開した葉の枚数がこのとおり出ていれば活着は良好です。

 

4 定植後の管理

(1)病害虫対策

チョウ目、ハダニ類、うどんこ病の防除を行ってください。

 

(2)定植直後の高温に注意

定植後は、ハウス内の温度がいちごの生育適温(25℃)を超えないよう、換気を積極的に行いましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。