台風シーズンに備えて

台風シーズンに備えて

いよいよ秋冬野菜作付けの季節となってきました。

昨年は9月に関東地方に台風21号、24号が接近・上陸し、大きな被害をもたらしました。

気象災害に備えるとともに、作目・作型に合わせた管理を行い、良品生産に努めましょう。

1 台風の発生数と関東甲信地方への接近数

2009年から2018年までの10年間の台風発生数と関東甲信地方(伊豆諸島及び小笠原諸島を除く)への接近数は表のとおりです。

年間の平均発生数は24.5個で、発生の多い月は8月5個、9月5.3個、10月3.2個、11月1.5個、12月0.8個で全体の約65%です。一方、関東甲信地方への年間の平均接近数は3.6個で、8月1.1個、9月1個、10月1.2個と全体の90%以上を占めています。

特に2016~2018年の過去3年は年間接近数が平均5.7個で8月2.3個、9月1.3個、10月1.3個と多い状況となっています。

今年は6月末までの台風発生数が3個と平均の4.7個に比べ少ない状況でしたが、過去の同様に少ない年も2010年を除き、平年並みに台風が発生しているので、注意が必要です。

201908

2 台風に対する農作物等管理技術対策について

(1)事前対策

ア.共通事項

(ア)排水路の点検・整備を行い、水の停滞に備える。

(イ)作物により防風網を設置するなど強風に備える。

(ウ)安全第一とし、増水した河川や用排水路に近づいたり、管理作業を行わない。

イ.園芸用ハウス

(ア)フィルムの破れ、支柱、支線、ターンバックルなどを点検・補修し、必要に応じて筋交いを入れるなど補強する。特に雪害で被害を受けたハウスなどは入念に点検し、対策を講じる。

(イ)台風襲来直前

  • 出入口、天窓、サイドをしっかり固定し、隙間からの風の吹込みを防ぐ。
  • 停電、浸水による漏電等が想定されるので、不必要な電源は遮断する。
  • 換気扇を回してハウス内を負圧にし、被覆材のバタつきを防ぐ。
  • 大雨による施設内の浸水が心配される場合には、出入り口に土のうを設置する。

ウ.水稲

強風による穂ずれ、葉の損傷、倒伏等を防ぐため、可能な範囲で深水にする。

エ.露地なす

強風に備えて、支柱や枝の誘引などについて点検・補強する。

オ.ねぎ

強風による倒伏に備え、土寄せのできるものは早めに実施する。

カ.果樹

  • 収穫できる果実は事前に収穫する。
  • 棚や支柱、網などを補強し、樹体の揺れを少なくする。

キ.花植木

  • 排水対策を行うとともに、フラワーネット等の点検・補強を行う。

    

(2)通過後の対策

ア.共通事項

台風通過後は病害虫の発生を防ぐため、薬剤防除を行う。

イ.水稲

  • 冠水したほ場では速やかに排水する。ただし、台風通過後に高温・強風が懸念される場合は、天候が安定するまで深めの湛水状態を保つ。
  • 台風通過後は穂枯性病害(もみ枯細菌病、内頴褐変症)や白葉枯病の発生が懸念されるため、収穫前日数に注意して可能なら薬剤散布を行う。

ウ.露地なす

  • 水の停滞による湿害や病害(青枯病、半身萎凋病、褐色腐敗病等)の発生を防ぐため、速やかな排水に努めるとともに薬剤防除を行う。
  • 風雨により被害を受けた果実は早く摘果し、樹勢の回復を図る。

エ.ねぎ

  • ほ場作業が可能になり次第、軟腐病・白絹病・小菌核腐敗病等を対象に薬剤防除を行う。
  • 収穫期に達しているほ場では、高温多湿による軟腐病の被害拡大が懸念されるので、ほ場作業が可能になり次第、速やかに収穫・出荷を行う。

オ.ブロッコリー・キャベツ

  • 風雨により軟腐病・べと病・黒腐病の発生が懸念されるので、薬剤防除を行う。
  • 天候が回復次第、早めに中耕を行い土壌の通気性を確保する。
  • 土壌が流亡した場合は、株を直し株元に軽く土寄せを行って倒伏やねじれを防ぐ。

カ.にんじん・こまつな等葉菜類

葉の損傷が見られた場合には、速やかに薬剤防除を行う。

キ.果樹

  • 落下した果実は速やかにほ場外へ搬出する。
  • 葉・枝・果実の損傷が発生した場合は、なしでは輪紋病、ぶどうではべと病や晩腐病、いちじくでは疫病、りんごでは腐らん病の発生が懸念されるので、薬剤防除を行う。

ク.花植木

  • 倒伏した株は引き起こして株元を軽く押さえ、噴霧器等で付着した土を洗い流すよう薬剤散布を行い、病害の発生を予防する。
  • 破損した茎葉は病害の発生源となることから、速やかにほ場外へ搬出する。
  • 浸冠水した施設、資材等は必要に応じて消毒を行う。
  • キク・宿根アスター等の栽培に係る電照・補光関連施設(電球・タイマー等)は、速やかに作動状況の確認を行う。

※農薬はラベルに記載されている適用作物、使用時期、使用方法等を十分確認して使用してください。

自然災害等様々なリスクに備えて、農業共済や収入保険制度に加入しましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。