いちごの管理
いちごの管理
昨年は、秋の天候不良や台風の襲来・急激な冷え込みで定植や保温作業が遅れる事例が見られました。その結果、株を充実させる期間が短く、葉の展開が遅れ、厳しい寒さも加わって収穫時期の遅れや収量低下につながりました。
いちごの収穫期間は、来春5月までの長期間にわたります。生育に合わせた管理を行い、安定した収穫ができるよう努めましょう。
1 クラウンの位置を再確認し、根を深く多く張らせましょう
いちごは、葉で作った栄養分の余剰を根に貯め、厳冬期(12~1月)はその貯蔵栄養が株の生育や果実肥大に利用されます。根張りが悪く、根に蓄えが少ないと、厳冬期の葉が小さく展開も遅くなるため、次の花房の育ちが悪くなり中休みや株疲れの原因になります。
図1 修正の必要な株(クラウンが上がっている)
図2 クラウンの位置が適正な株
根は葉の付け根から発生しますが、付け根が地表より上にある(図1)と新しい根が出ません。さらに厳寒期は根の量が減っていくので、花が咲くまでに多くの根を張らせて栄養を貯めることが重要です。マルチをかける前にクラウンの位置を見直し、位置が高い株は下に押し込むか、クラウンに土寄せをして発根を促しましょう。(図2)
*適正な位置で定植し活着までの灌水がしっかりできれば、托葉の付け根から発生した一次根が、自然にクラウンを良い位置に引き込んでいきます。
2 厳冬期の樹勢を維持するため、葉面積を確保しましょう
厳冬期(12~1月)は日照量・時間ともに少なく着果負担もかかっているので、地上部で作った栄養分だけでは足りず、根の貯蔵栄養が果実や株の生育のために消費されます。葉面積が少ないと作れる栄養分も少なくなるので、葉のかきすぎに注意しましょう。
葉面積が多い(葉枚数が多い)方が、樹勢維持のために有利であるとともに味の良いおいしいいちごが生産できます。葉枚数の目安は、頂花房(第1花房)の出蕾期で6枚程度、収穫開始期に7~8枚とします(1芽当たりの枚数です)。
なお、不要な腋芽やランナー・収穫の終わった果梗は栄養分の無駄使いとなるので、早めに取り除きましょう。
3 保温開始とマルチを適期に行いましょう
保温開始時期は、第一腋花房(第二花房)の分化後で、一般的に頂花房分化後約30日(とちおとめのポット育苗は概ね10月15~20日頃)が目安になります。開始時期までが高温だったり第一腋花房(第二花房)の分化前に保温すると、第一腋花房(第二花房)の花芽分化が遅れて中休みの原因となります。
保温開始後(ビニール被覆後)は日中の温度が高くなりやすいので、ハウス内が25~27℃を目安に換気し、夕方ハウスを閉めた後の温度上昇にも注意しましょう。
また、最低気温が生育適温以下を下回る予報が出た場合には、保温開始前でも保温につとめ、急激な低温にあてないようにしましょう。
マルチは地温が18℃以下になる前に行います。地温はいったん下がると上がりにくいため、温度計を地中に設置して確認するようにつとめましょう。
生育ステージごとの温度管理は表1を目安にしてください。なお、適温管理ができるよう小トンネルの準備や暖房機の点検・ダクトの配置調整は早めに進めましょう。
表1 温度管理の目安(とちおとめ)
4 病害虫防除
保温開始後、ハウスを被覆するようになると湿度が高まり、うどんこ病が発生しやすくなります。また、ミツバチやマルハナバチを導入すると使用農薬も限られるので、なるべく保温開始までにうどんこ病、ハダニ、アブラムシの防除を行いましょう。
天敵(カブリダニ)を利用する場合は、使用する農薬の影響日数を考慮して、計画的に防除をしましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。