虫害対策について

虫害対策について

徐々に気温が高まり、春が感じられる季節となりました。

害虫が快適と感じる気温は、人と同じです。害虫の生態を知り、害虫予防をしっかりと行いましょう。

1 春によく発生する害虫

(1)アブラムシ類

アブラムシ類は種類によって個体数が多くなる時期は異なり、年間を通じて様々な作物に発生します。新葉に緑色から赤褐色の虫が群生して汁を吸うだけでなく、ウイルス病を媒介します。また、尾端から出る液状の排泄物(甘露)が、すす状に黒くなる等、カビが生え商品価値を下げてしまいます。

各種アブラムシ類は、条件が良ければ1週間程度で成虫になるので、密度が急激に増えてしまいます。粒剤による初期防除を徹底するとともに、防虫ネットや光反射マルチ等の物理的防除も有効です。

オオイヌノフグリの葉裏にいるアブラムシ
オオイヌノフグリの葉裏にいるアブラムシ

(2)ネキリムシ類

春から秋まで複数回発生します。植物の地際部を食害するため、地上部が倒れたり、しおれたりします。ヨトウガと同様に、日中は土壌中に隠れ、日が沈むと土壌から這いでてきます。多発すると被害が大きく、薬剤による予防が重要です。播種前・定植前に粒剤を土壌混和して予防しましょう。

(3)ヨトウガ

年2回発生し、成虫は4月下旬~5月下旬と8月下旬~9月上旬に現れます。春先に発生した成虫は、白色の卵を数百粒ひと塊にして葉裏に生みます。5月~6月に卵から羽化した緑色~暗褐色の幼虫が葉を食害します。孵化した幼虫は、はじめ1枚の葉に群生するので、葉の食害に注意し、孵化直後の幼虫集団を捕殺するのが効果的です。成長した幼虫は、日中、土壌中に身を隠し、主に夜間活動します。

なお、農薬を使用する場合は使用基準を順守してください。

ヨトウガは日中は土壌中に潜んでいる。
ヨトウガは日中は土壌中に潜んでいる

2 害虫対策の基本

害虫対策は予防が重要です。害虫は一度発生すると、気が付かないうちに被害が拡大し、収量が大幅に減少してしまうこともあります。栽培を始める際には、予防を前提とし、あらかじめ害虫を寄せ付けない環境づくりを心がけましょう。

(1)周辺雑草の管理

害虫は農作物以外にも多くの雑草で生育しています。農作物を育てている隣で除草を行えば、餌場を失った虫たちが一斉に農作物へ飛び込んできます。除草作業は、農作物がほ場にない時期に行う、前もってほ場周辺に防草シートを敷く等、圃場外の生息地からの飛来を最小限に抑えるよう工夫してください。

(2)自分で行う発生予察

害虫は繁殖力が高く、初期防除を行うことが大切です。しかし、発生初期をみすごし、気がついたら大発生していたということも多くあります。市販されている粘着板を使用すると、圃場内の初期発生を目で確認することができます。粘着板の種類は誘殺する害虫によって異なります。コナジラミ類、アブラムシ類、ハモグリバエ類等は黄色の粘着板、アザミウマ類は青色粘着板をほ場内に設置し、害虫が粘着板に誘殺されていないかを定期的に確認し、初期防除に役立てましょう。

粘着板の設置
粘着板の設置

(3)害虫に強い農作物をつくる

害虫を完全に防除することは難しいですが、農作物を丈夫に育てることで被害を抑えられます。植物は身体が弱まるとダニ類やアブラムシ類等が発生しやすくなります。人間と同様、身体を丈夫にすることで、害虫に攻撃されても抵抗し、被害を抑えることができます。

農作物を健全に生育させるためには、作物ごとに適性施肥を行い、日当たりを良くする、風通しを良くする等、光合成を活発にさせることが重要です。また、農作物に隣接する雑草は、小さいうちに除草しましょう。雑草を放置すると、農作物の栄養分を横取りする、日陰を作る等の生育阻害を引き起こします。

(4)物理的防除の実施

害虫が直接農作物に寄生しないよう物理的防除を行うことも大切です。物理的防除効果の高い防虫ネットや寒冷紗の他に、マルチなどは害虫の侵入を防ぐだけでなく、雑草を抑えることもできます。しかし、トンネルやべた掛けの被覆をする場合は、使用するタイミングに気を付けてください。ヨトウムシ類等が発生した後に被覆を行うと内部で害虫が繁殖し、被害が拡大する可能性が高いです。播種または定植後は、害虫が農作物に発生する前に被覆を行いましょう。

ネットの目合いと侵入防止できる害虫
ネットの目合いと侵入防止できる害虫

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。