ハナモモ等促成枝物について
ハナモモ等促成枝物について
東松山農林振興センター
東秩父村、小川町は、節句向けハナモモをはじめとする枝もの産地です。産地では、ハナモモをはじめ、ハナウメやサクラなども収穫後加温して、自然開花よりも早い時期に花を咲かせて出荷しています。今月は、ハナモモを中心とした管理のポイントを紹介します。
1 樹の肥培管理
(1)整枝・せん定
収穫する樹は、①風通しがよくなるように②内部まで光がよく入るように間引きせん定を行います。2年に1回収穫する場合の適期は2~3月、毎年収穫する場合は6~7月です。
(2)施肥
定植10年以上の樹は、窒素・リン酸・加里を各10~12kg/10aを目安に施用してください。定植10年までの樹は2割減を目安に施用してください。
(3)病害虫防除
整枝・せん定や雑草管理をしっかり行い、病害虫が発生しにくい環境をつくりましょう。農薬を使用する場合、枝物は、「樹木類」に登録のある農薬が使用できます。
発芽期、新梢伸長期に、モスピラン顆粒水溶剤やアディオン乳剤(登録は11月14日現在)を散布します。
※農薬の使用に際しては、ラベルをよく読み、使用基準を守るとともに、周辺への飛散防止にも注意してください。
2 収穫管理
(1)枝切のタイミング
出荷予定時期から、水揚げ~促成~ならしの日数(10~14日)を逆算して枝を切ります。この日数は、収穫時期の早晩、収穫時点での花芽の進み具合によって変わってきます。
実際の花芽と出荷予定日までの気温・天候等を見ながら、多少余裕をもって作業をしましょう。
(2)枝の切り方(写真1)
翌年以降の生育を考慮し、枝の基部を5~10cm樹幹側に残して収穫します。
写真1 枝の切り方
(3)枝選び・束ね方
花芽の付き具合をよく確認し、花とびの無い、花芽の多い枝を揃えてひと束にしましょう。少しの手間が、品質向上につながります。
ご自分が、「これなら買いたい」と思うような束をつくりましょう。
また、日陰と日向、樹冠の上部と下部など環境が異なると、花芽の付き具合や進み具合が違います。似たような環境の枝を組み合わせると、花芽が揃いやすいです。
(4)結束・水揚げ
規格にあわせて、長さを揃えて結束します。結束したら、その日のうちに水揚げを始めます。水揚げは、3~4日しっかり行います。(写真2)
写真2 水揚げの様子
3 促成の方法
しっかり水揚げをした束は、開花に適した温度・湿度・暗黒条件の環境で、花芽を膨らませます。加温・保温が可能な設備のある、ハウスや物置などを利用した促成室で行なわれることが多いです。
(1)温湿度管理
温度は20℃前後を保ち温度変化がなるべく無いようにします。上限25℃・下限15℃で管理しますが、温度変化が大きいと花の色が変わるなどの障害がおきることがあります。
湿度は、80~90%を保ちます。外気温の低下や、天候によって湿度が上がる場合があるので、注意します。湿度が上がらない場合は、床に打ち水をします。
空間内の温度が均一になるように、また、結露によるカビの発生を防ぐために、循環扇等で空気を動かしましょう。
(2)暗黒条件
促成に光は必要ありません。光があると、葉芽が動き、緑色が目立ちます。
ハウスを利用する場合には、遮光資材などで覆います。
(3)促成期間
花芽の進み具合によって違いますが、おおよそ5~7日で蕾が膨らみ、あと数日で開花する状態になります。この時点で、花芽の上から下まで全体に揃っていれば、上手に管理できていることになります。
4 ならし
出荷の2~3日前には、風の当たらない場所へ移して外気にならします。夜間5~10℃を保ちましょう。急激な温度変化や水切れは、花の色が変わることがあります。
ならしに移す場合は、できれば昼の暖かい時間に行うとよいでしょう。
5 注意事項
ブルーイング(花弁の色が青紫色になること)や、開花しないなどの品質不良がでないように、以下の事に注意しましょう。
(1)水切れさせない
ア促成中の水量が確保されているか確認する。
イ雑菌が繁殖しないように、こまめに水を変える。
(2)急激な温度変化(差が10℃以上)や高温(30℃以上)低温(5℃未満)を避ける。
ア促成場所の中で、温度差が生じないよう送風機等で空気を循環させる。
イ枝物の高さで温度を測定し、確認する。
6 直売可能な促成枝物
表1のとおりです。品種、出荷時期、促成日数を参考にしてください。促成方法についてはハナモモを応用してください。
写真3 ハナモモの入った花束
表1 直売可能な促成枝物
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。