水苗の育苗管理について
水苗の育苗管理について
去年を振り返ると、4月~6月の育苗、田植えの時期は比較的気温が高く、育苗管理の難しい時期でしたが、田植え後の生育は良好で豊作が期待されました。しかし、7月上旬にいもち病の注意報が発表され、曇雨天等による登熟不良が発生し、埼玉県の作柄は97となりました。昨年の病害虫発生等の反省を踏まえ、豊作に繋がる健苗作りに取り組みましょう。
1 種子更新
毎年更新を行いましょう。
【注意】 特に昨年、種子伝染するいもち病、稲こうじ病の発生した水田では、種子更新、種子消毒の徹底が必要です。
2 塩水選
充実した籾殻を確保する為に比重選をしましょう。
3 種子消毒
種子消毒には温湯消毒と薬剤消毒の2種類があります。温湯消毒では発芽が揃いやすく、減農薬のメリットがあります。両消毒方法とも、いもち病、ばか苗病、もみ枯細菌病、イネシンガレセンチュウ等の防除効果は同程度です。
温湯消毒方法
温湯消毒器を用意し、乾いた籾を網袋に入れて、60℃の温湯に10~15分浸漬し、その後すぐに流水で冷却します。
※発芽への影響が大きい品種は避けましょう。
4 浸 種
種子が発芽を始めるよう吸水させます。吸水時間は各品種の積算温度(コシヒカリは120℃、その他品種は100℃)を目安に浸種します。水温は10~15℃が適温で、特に浸種初日は水温10~15℃を確保しましょう。低温で浸種期間が長いと発芽不良や発芽不揃いとなります。籾殻に泡が出てきたら、酸欠にならないよう水を取り換えます。
5 催 芽
一斉に発芽するよう芽だしをします。濡れむしろにくるみ、さらにビニールで包んで2日程度置く、風呂の残り湯に一晩浸ける等をしてハト胸状態にさせます。
図1 ハト胸状態
※芽が伸びすぎないよう注意しましょう。
6 播 種
なるべく晴天の日に行いましょう。厚まきは軟弱徒長を招き、苗いもちや植え痛みによる初期生育停滞等の原因となります。例を参考に稚苗、中苗の播種を行いましょう。
例)稚苗(育苗日数15~20日)
→1箱あたり200~220g(催芽籾)
中苗(育苗日数約30日)
→1箱あたり100~125g(催芽籾)
床土はJA等で販売している「育苗培土」を使用しましょう。粒の細かい水田土やpHの高い畑土は苗の生育不良、苗立枯病やムレ苗などの障害の原因となりますので避けます。
【注意】 育苗期間が25~35日の中苗を作る場合、暖地用の培土を使用すると肥切れが起こる可能性がありますので、肥料分の多い寒冷地用の培土を使用しましょう。
7 苗 床
苗の水没、生育が不揃いにならないよう、高低や凹みのない苗床をつくりましょう。
【注意】 苗箱設置後の均平作業は難しく、苗が生育不良や不揃いになった例があります。
8 出 芽
(1)積み重ね出芽
角材上に15~20枚重ねて積み、最下段と最上段に土を入れて灌水した箱を積み、保温マットやむしろとビニールで被覆して保温します。通常2~3日で出芽しますが、気温が低いと日数を要します。出芽が揃った箱を苗代に出して下さい。
(2)露地出芽
播種後すぐ苗代に出して出芽させる場合は、気温に大きく左右されます。灌水と換気に注意し、高温による焼けや病害の発生、低温時の出芽不揃いなどの障害に注意しましょう。
9 育苗管理
(1)緑化期(本葉1葉期まで)
出芽が揃い、持ち上がった覆土を灌水して落ち着かせ、種子が露出している場合は土をかけます。縞葉枯病を媒介するヒメトビウンカの飛び込みを防ぐため、①育苗中は寒冷紗等で被覆 ②育苗床の周辺は事前に雑草防除を徹底しましょう。温度管理の目安は昼が20~25℃、夜が15~20℃です。
【注意】 ビニールハウスやトンネル被覆育苗で日中の高温による苗焼けや、低温による生育障害が起きます。高温、低温のどちらも注意して育苗管理を行いましょう。
また、昨年は5月上旬に芽出し苗を露地の苗代に出した際、風・高温等により枯れた苗がありました。出芽後の白い芽は強い光や高低温に敏感なので、必要に応じて寒冷紗等で日よけ風よけをして下さい。
(2)硬化期~田植え
生育が不揃いになるので本葉2葉期までは苗箱の縁以上には水をいれません。温度の目安は昼20~30℃、夜10~15℃です。肥切れが起きた場合は落水し、1箱あたり窒素成分で0.5g(硫安の場合2.5g)を0.5リットルの水に溶かして散布しましょう。
田植えが遅れて苗が伸びすぎるときは、灌水を控えぎみに管理し、田植え10日前頃に断根して床面まで水を上げて下さい。
【注意】 保温マット等をかけたことでムレ苗、苗立枯病の発見が遅れた例がありました。育苗中は適時、中をのぞいて観察してください。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。