秋冬野菜の栽培に向けて
秋冬野菜の栽培に向けて
8月は秋冬野菜の栽培が始まります。ほ場準備を早めにおこなうとともに、品種に合わせた種まき、定植時期を守り、良品生産に努めましょう。
1 ほ場の選定
(1)輪作を実施しましょう
同じ作物を作り続けると、根こぶ病や萎凋病、立枯病などの土壌伝染性の病害が発生したり、微量要素の欠乏症状が現れるなど「連作障害」が発生します。
いろいろな作物を輪作することにより、連作障害を避け計画的な作付けを行いましょう。
表1 野菜の輪作を行う上での連作障害回避の目安
(2)太陽熱土壌消毒
夏季の高温を利用した土壌消毒方法で、消毒効果は天候の影響をうけますが、土壌表面近くの雑草種子、キスジノミハムシやネキリムシ、ネコブセンチュウなどの害虫、ホウレンソウ苗立枯病やナス半身萎凋病、根こぶ病等の土壌病害に有効とされています。
図1 太陽熱土壌消毒
①あらかじめ堆肥、肥料の施用などを行ったほ場に、定植できる状態の畝を立てます。
②降雨後か灌水により、土壌が湿った状態で透明のビニールかマルチで被覆します。
③盛夏期をそのまま過ごし、定植直前に透明の被覆剤を剥がして畝を崩さず作物をは種又は定植します。被覆の目安はひと月以上です。
土壌消毒効果が期待できるのは地表10~15cm程度なので、被覆除去後は耕うんなどをせず、できるだけ土を動かさないようにしましょう。
2 セルトレイの基本的な苗づくり
キャベツやブロッコリー、ハクサイ、のらぼう菜などは、セルトレイの育苗により根鉢が形成され定植作業が容易になります。
セルトレイは72穴、128穴、200穴などがあり、穴が多いほど少ない面積と資材で多くの苗を育苗できますが、鉢土が少ない分管理が難しくなります。
セルトレイによる苗づくりの手順
①水稲の育苗箱などの上にセルトレイを置き、育苗培土を詰めます。128穴のセルトレイに必要な培土の量は約4リットルです。
②充分に灌水し培土を湿らせるとともに、落ち着かせます。(この時、培土の高さは、覆土をするためトレイの上面より低くします。)
③1穴に1粒ずつ種子を播き(深さはトレイ上面から1cm程度)、覆土します。新聞紙を被せ発芽が確認できるまで、直射日光の当たらない風通しの良いところに置きます。(種播き前に十分灌水すれば、発芽まで灌水の必要はありません。)
④発芽が確認できたら、夕方または早朝に新聞紙を剥がし、根鉢を形成させるためコンテナやベンチなどで地面から離して育苗します。
この時、防虫ネット(ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ)対策には2mm以下。または不織布。)で被覆することにより、苗の食害を防ぎます。
⑤灌水は午前中に充分行い、夕方には表面が乾いて、葉が軽く萎れている程度にします。夕方の灌水は徒長の原因になるため、苗の萎れが激しい時のみ軽く葉水をします。また、灌水ムラは生育のバラつきの原因となるので、注意します。
⑥セル苗の本葉3.5枚程度で根鉢が形成されていれば、定植適期となります。
⑦育苗期後半~定植当日に下記薬剤をジョウロなどで灌注することにより、定植後3~4週間対象害虫の防除効果が期待できます。
表2 育苗期後半~定植当日に灌注できる薬剤と対象害虫(抜粋・平成27年7月16日現在)
3 農薬のローテーション散布
どんなによく効く農薬でも、使用していくうちに病害虫に対する効果が低下することがあります。これを薬剤に対する抵抗性や耐性といいます。
農薬を効果的に使用するには、使用基準を厳守することはもちろん、付着ムラを作らないように散布することや、作用点(系統)の異なる農薬を組み合わせて使用するローテーション散布により、薬剤に対する抵抗性や耐性を発達させないことが重要です。
表3 主な殺虫剤の系統
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。