これからの小麦栽培のポイント

これからの小麦栽培のポイント

これからの小麦栽培のポイント~ 昨年の反省と対策 ~

今回、これからの小麦栽培のポイントを、反省を踏まえてまとめました。平成26年産小麦栽培では、初めて「さとのそら」を栽培した生産者も多く、農林61号と違った生育に苦慮したと思います。平成26年産「さとのそら」の栽培を振り返ると、①肥料を多く必要とする品種なので生育後半に肥切れ、②2月に記録的な降雪が2回あり、雪解けによる湿害や肥切れ、防除時期を逃して雑草が多発、③6月上旬の豪雨でコンバインがほ場に入れず、収穫作業が遅れたことがありました。

1 明きょの設置 ~湿害、刈遅れを防ぐために排水対策を!!~

2月の大雪では、ほ場内の窪んでいる部分や外縁部に雪が溜まり、その結果根が弱り、その後の生長及び子実収量に大きく影響しました。また、6月の記録的な豪雨で、コンバインがほ場に入れない等の理由により、収穫の遅れが目立ちました。

湿害、刈り取り作業の遅れを防ぐためには、降雨後の表面水の速やかな排出が重要です。

播種後、麦の茎立ち前までであれば、明きょ設置作業が可能なので、できるだけ早く設置しましょう。明きょは、必ずほ場周囲及びほ場内5~10m間隔で排水溝を作ります。特に水田では、事前に排水路へ水が流れるよう畝、排水口を掘るなど、ほ場外へ水が流れる対策を実施することが大切です。

2 踏圧 ~年内に1回、年明け2回の麦踏みが理想~

麦が3葉期を過ぎたら実施します。2週間以上の間隔をあけて、3回以上の実施が望まれます。特に早播や暖冬年では踏圧回数を増やします。

3 追肥 ~必要な時期に、必要な量を!!~

平成26年産は、4月ごろから帯状に色落ちしたほ場に追肥を行ったところ、出穂期までに回復しました。「さとのそら」は「農林61号」に比べ、分げつが多く、窒素の吸収量が多いため、このような現象が発生する可能性があると考えられます。

追肥は、①出穂2週間前の4月上旬に窒素成分で4~6kg/10aを基本としますが、②茎立ち後で追肥作業が困難な場合、3月上中旬の茎立ち直前に窒素成分で3~4kg/10aの追肥とします。

一発肥料を用いた場合でも追肥時期の生育状況を観察し、肥切れを起こしている場合は追肥をします。

4 病害虫・雑草防除

(1) 病害虫防除 ~開花期に赤かび病を防除~
赤かび病防除は、4月上旬頃から病害虫発生予察情報に注意し、4月下旬から5月中旬にかけて、麦の出穂時期を見計らって適期防除をします。

(2) 雑草防除 ~2月中・下旬に要観察!3月上旬にかけて適期防除を!~
平成26年産では、3月上旬からヤエムグラ等が発生し、多発したほ場が見られました。2月の大雪で薬剤散布の時期を逃したケースもあったので、早期に発見し、適期にアクチノール等の茎葉処理剤で除草しましょう。

★農薬散布をする場合は、散布方法等を各薬剤のラベル等で確認し、飛散に注意して安全使用に努めましょう。

5 収穫 ~適期収穫できるよう排水対策を忘れずに!!~

刈遅れは小麦の重要な品質構成要素である「容積重」に大きく影響し、品質を悪化させます。排水対策を実施し、適期収穫できるよう心がけましょう。

収穫適期は、穂がわん曲し始めた頃で成熟期後3~4日頃です。成熟期とは葉や穂首部分が黄化し、穂軸や粒は緑色がぬけ、粒にはツメ跡が僅かにつくぐらいの堅さに達した頃のことです。

オレンジ色のかわいい雑草に要注意!!

大豆、そば畑や畦畔にオレンジ色のかわいい花をつける草は、マルバルコウという防除しにくい雑草です。多発すると作物にからみつき、ほ場一面を覆い、収穫を断念する場合もあります。

また、大豆やニンジン畑でホオズキのような袋をつける草はフウリンホウズキという雑草です。土壌処理剤で防除できますが、発生すると防除しにくい雑草です。

マルバルコウなどアサガオ科の帰化雑草やフウリンホウズキは、最初に畦畔、ほ場の畦畔周辺部、そしてほ場内部に侵入してきますので、種を残さないよう早めに抜き取りましょう。

201501-2   201501-1
フウリンホウズキ   マルバルコウ

来年のためにイネ縞葉枯病対策

201501-03平成26年産の水稲は、箱施薬、本田防除の徹底でイネ縞葉枯病による被害は軽微となりました。しかし、病害虫防除所が8~9月に水田で捕獲したヒメトビウンカのイネ縞葉枯病ウイルスの保毒虫率は県平均で7.4%と依然多発を警戒する高いレベルです。また、比企地域のひこばえでイネ縞葉枯病の発病程度を調べたところ、多いところでは30%近くありました。次期作に向けて、①イネの刈り株やひこばえはヒメトビウンカの生息場所となるため、冬期のうちに必ず耕うん、②ヒメトビウンカの冬季の生息場所となる畦畔等の雑草防除を徹底しましょう。

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【注釈】

掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。

  • 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
  • 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
  • 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
    また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。