いちご(とちおとめ)の管理ポイント 育苗後半~定植まで
いちご(とちおとめ)の管理ポイント 育苗後半~定植まで
今年もいちごの育苗シーズンとなりました。改めて基本技術の励行により、良苗の安定確保をめざしましょう。
1 採 苗
ポット育苗(挿し苗)では7月上中旬をめどに本葉2.5~3枚の揃った若苗を採苗します。
ポット受け育苗の場合は6月下旬以降、ランナーをピンで固定しポットに受けます。
2 仮植後
炭疽病回避のため必ず雨よけ育苗とします。仮植後5日~1週間は遮光(40%程度の遮光資材)しながら、こまめなかん水を行います。新葉が立ち上がってきたら夕方や早朝から徐々に日を当てます。ポット育苗では、鉢上げ活着後に窒素成分で鉢当たり100~150mgを施肥します(「ポット錠ジャンプ」は2粒、「IB化成S1号」では2~3粒)。
3 育苗後半
こまめなかん水でチップバーンの発生を防ぎ、暑くならないよう日中は遮光資材で被覆します。ただし夜間や曇天時の日中は、外して湿度低下を図ります。同時に古葉やランナーを取り除き、常時3~4枚の展開葉とします。
育苗後半の極端な肥切れは、芯止まり株の発生を助長させるので、8月上旬に置き肥か液肥の葉面散布を行います。
4 定 植
基肥は窒素成分で15kg/10aをめやすに施用します。定植本数は7,500本/10a、株間は25cm以上とします。定植時期は花芽分化確認直後とします。埼玉県での定植適期は、ポット育苗9月10日~15日前後、無仮植育苗で9月25日前後です。
5 定植後
定植後は早く活着させるために少量多回数かん水で発根を促します。クラウン部周辺に湿気があると、そこから不定根が発生しますが、この不定根の発生が重要なので、一日数回のこまめなかん水を実施します。
活着後は、5枚の展開葉を残すように摘葉します。摘葉の遅れもクラウン部から発生する根が少なくなる原因なので注意しましょう。
6 病害虫防除
うどんこ病、炭疽病及びハダニ類は、苗からの持ち込みがほとんどです。定植前に確実に防除しましょう。
ハダニ類
いちご育苗期での主な病害防除について
炭疽病及び萎黄病はいちごにおける重要病害であります。苗を良く観察し、病気の発生に注意するとともに、育苗期から予防的な防除対策に取り組みましょう。
1 炭疽病
【発生生態】
伝染源は土中に残った前作の発病株残渣によるもの、潜在感染した親株があり、これらから形成された胞子が雨や潅水のしぶきなどと混じって飛散することにより伝染します。
7月から9月にかけての高温時に発生しやすくなります。
【防除対策】
- 水はねによって伝染するので、雨よけ栽培を基本とし、外部から風雨が当たらないようにします。
- 頭上かん水は水はねにより、本病の発生を助長するため避けましょう。点滴かん水チューブ、底面給水マットなどでかん水は株元に行いましょう。
- 高温多湿は、本病の発生を助長するため、夕方には地上部が乾いた状態になるよう、かん水の時間や量に注意しましょう。
- 発病株や感染が疑われる株は早急に取り除き、ビニール袋などに入れ、密閉し、ほ場外で嫌気的発酵処理をしましょう。
- 予防を主体に薬剤を定期的に散布しましょう。また、耐性菌発現の恐れがあるので、同じ系統の薬剤は連用しないようにしてください。
2 萎黄病
【発生生態】
厚膜胞子が土壌中に残って伝染源となり、いちごの根から侵入し感染発病します。厚膜胞子は、自然土壌中で数年以上生存できます。潜在感染している親株を使用すると、ランナーを経由して子苗に伝染します。
【防除対策】
- 発病株や感染が疑われる株は早急に取り除き、ビニール袋などに入れ、密閉し、ほ場外で嫌気的発酵処理をしましょう。
- 薬剤又は太陽熱利用による土壌消毒を行いましょう。
- 発病地で使用した農機具や長靴に付着した土壌を他の畑、ハウスに持ち込むのは止めましょう。
農薬の使用に際しては、ラベルを良く読み使用基準を守るとともに周辺への飛散防止にも注意してください。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。