いちじくの栽培(植付け4年目以降)(桝井ドーフィンの一文字仕立て)
いちじくの栽培(植付け4年目以降)(桝井ドーフィンの一文字仕立て)
いちじくは、独特の食感と熟した甘みが魅力の果物で、初心者にも育てやすいため、近年、栽培される方が増えています。今回は成木の管理(4年生以上のもの)について説明します。
なお、「植付け~1年目」は平成22年3月号、「2年目」は平成23年3月号、「3年目」は平成24年3月号で紹介してありますので参考にしてください。
※過去の記事は、JA埼玉中央ホームページで見ることができます。
1 せん定
○3月中旬~4月上旬に行います。
○前年に伸ばした結果枝を切り戻します。切り戻す位置は、結果枝の基部から2芽(2節)と3芽(3節)の間が基本です。その際、3芽(3節)の少し下の部分を切るのがポイントです【図1、写真1】。
切り戻した後は、切り口に癒合促進剤を塗布し、枯れ込みを予防しましょう。
【図1】せん定の場所
【写真1】せん定の場所
2 稲ワラの処理
○せん定と同時に、防寒のために主枝に巻き付けておいた稲ワラを取り除くのが一般的です。しかし、ワラを巻いたままのせん定は大変ですが、遅霜の心配がなくなる4月中~下旬頃までは稲ワラはそのままにしておくことが理想です。
○取り除いたワラは、5月上旬までは1カ所にまとめておきます。畝に敷き詰めるのは5月中旬以降にしましょう。(早期にワラを敷き詰めると地温が上がりません)
3 芽かき
○5月になると、切り戻した前年の結果枝の基部付近から新芽が発生します。たくさん発生する新芽の中から、今年の結果枝とする芽を選びその他は除去します。
○作業は下記の(1) ~(4) に留意して行いましょう。(1) 芽が3~4葉になったら行う、(2)片側40㎝に1芽を残す(既にせん定した結果枝が概ね40cm間隔になっていると思います)、③「横芽」や「やや下芽」を残すのが基本、(4)遅れて伸びる芽もあるので、2~3回巡回して実施する。【図2-1】【図2-2】。
※作業適期(芽の大きさ等)は、実際の写真【写真2】も参考にしてください。
【図2-1】水平に誘引してある主枝を横から見たところ
【図2-2】せん定した結果枝を断面として見たところ
【写真2】芽かきの時に「残す芽」「取る芽」
4 枝の管理
○6月頃、結果枝が伸長したら、水平のパイプに誘引します。片側の結果枝の間隔は40cm程度とします。その後、結果枝の伸長に合わせて、垂直に誘引します。【図3】。
○結果枝は18~20節(1葉につき1節)になったら、先端部を摘芯します。
【図3】誘引の方法と結果枝の間隔
5 収穫
○当地域で一般的に栽培されている品種「枡井ドーフィン」は、収穫時期が8月下旬~10月下旬です。
○着果から収穫までは80~90日間で、果実が下向きになり、表面が緑色から赤紫色に変化し、果肉が柔らかくなったものから収穫します。いちじくは収穫適期の判断が難しいので、試し穫りをして熟度の確認を行うと良いでしょう。
6 施肥・水管理等
○4年生以上の株は「成木」として扱います。施肥量は【表1】を参考にしてください。
○いちじくは、果実類の中でも、(1)根が酸欠に弱く「湿害に弱い」、(2)根が浅く、葉が大きく蒸散量が大きく「高温・乾燥に弱い」という特徴があります。
○高温・乾燥となり、果実肥大が遅れたり、葉が萎れ気味になった場合は、適宜かん水を行います。また、長雨や大雨などにより、ほ場に水がたまった場合には、速やかに排水し、根が湿害を受けないようにしましょう。
【表1】いちじくの施肥体系
成木(4年生以上)の施肥量 | |
元肥 | ・3月上旬~中旬に施用 ・有機質肥料を使用 ・窒素成分で10a あたり8~10kg 程度 |
追肥 | ・5月中旬~9月中旬の間に2~4回程度施用 ・有機質肥料を使用(高度化成は根を傷めるため、使用しません) ・1回につき窒素成分で10aあたり2kg程度 |
土壌改良 | ・12月に施用 ・苦土石灰を10aあたり60~100kg(いちじくは弱アルカリ性土壌を好むので、必ず施用します) |
7 収穫後の管理
○収穫後、葉は黄色くなり次第に枯れてきますが、途中で葉かきはせず、11月下旬までは自然に落葉するのを待つようにします。
○12月上旬には、苦土石灰を施用するとともに、防寒対策として、稲ワラを主幹と主枝に約5cmの厚さで巻きましょう(垂直に誘引した結果枝には巻きません)。稲ワラは翌年の3月中旬~4月中旬まで、巻いたままにします。
8 防寒対策
○近年、(1)1~3月にかけて非常に寒い日が多い、(2)春の遅霜が厳しい傾向にあります。
○いちじくは凍霜害に弱く、芽吹きや生育に影響が出ている株が見受けられます。
稲ワラは非常に優れた防寒用資材です。必ず主枝・主幹に厚く巻くようにしましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。