水稲 収穫前後の管理について ~品質の良い米は基本技術から~
水稲 収穫前後の管理について ~品質の良い米は基本技術から~
水稲の収穫時期が近づいてきました。近年、夏季が高温傾向で推移しています。良質米生産のため、基本技術に立ち返った栽培管理や作業に努めましょう。
1 水管理
◯早期落水はダメ!
早期落水したほ場では、乳白米等による品質低下を招く恐れがあります。ほ場の条件にもよりますが、出穂期から1ヵ月間は水が必要です。早期落水はせず、完全に落水するのは収穫の10日~2週間前としてください。ほ場条件が良ければ、収穫間近まで土壌水分を保持することも品質の維持・向上に有効です。
また、収穫までに異常高温や台風等による強風・大雨が予想される時は、できる限りでの深水管理により品質低下を防ぎましょう。
2 収穫適期の判断めやす
○積算気温による適期判断
収穫適期は出穂後の気温により前後します。穂の全体が黄化してからでは刈り遅れで「胴割米」や「茶米」が多くなり、逆に早刈りでは「青米」や「未熟米」が多くなります。登熟期間の気温でも収穫時期が前後します。右ページの表1を参考に適期収穫を心掛けましょう。
【表1】出穂期から見た収穫適期の目安
品種名 | 出穂期 ※1 | 収穫適期の目安 ※2 | 滞緑色籾割合 |
コシヒカリ | 8月1日 8月5日 8月10日 |
9月6日~9月14日 9月11日~9月20日 9月17日~9月26日 |
15~10% |
キヌヒカリ | 8月1日 8月5日 8月10日 |
9月5日~9月13日 9月9日 ~9月18日 9月15日~9月24日 |
5~15% |
彩のかがやき | 8月10日 8月15日 |
9月13日~9月22日 9月19日~9月29日 |
90~45% |
8月20日 | 10月1日~10月14日 | 55~25% | |
朝の光 | 8月10日 8月15日 8月20日 |
9月15日~9月26日 9月21日~10月3日 9月28日~10月11日 |
25~5% |
※1「出穂期」とは、穂が出ている茎の割合が、全体のおおよそ半分に達した時期をさします。
※2「収穫適期の目安」は、本年8月21日までの平均気温の積算及び今後の平年平均値による推定値です。今後の天候により前後することがあります。
○穂の帯緑色籾の割合による判断
「滞緑色籾割合」とは、1穂の中に僅かでも青みが残っている籾の数の割合(%)のことです。右ページの表1の品種毎の滞緑色籾割合も参考に適期判断をしてください。帯緑色籾は図1のように稲穂の軸に近い元の部分に多く見られます。
3 倒伏した場合
台風や大雨により部分的に倒伏してしまった場合は、できるだけ刈り分けしてください。特にキヌヒカリは、倒伏により穂発芽しやすくなります。穂発芽による品質低下を避けるため、倒伏したほ場では収穫適期よりもやや早めに収穫してください。
4 乾燥・調製
適切な乾燥・調製を行うことは、おいしいお米に仕上げる最後のポイントです。仕上がり籾水分は、14・5~15・0%を目標にします。急激な乾燥や過乾燥は、胴割米や食味低下の原因になるので絶対に行わないようにしてください。穀粒水分が20%を上回る場合は、送風温度40℃以下とし、水分が20%以下になったことを確認してから送風温度を45℃に上げます。
また、乾燥機に籾を張り込んだ直後は、1時間程度送風のみを行うと、籾水分のばらつきが少なくなるため、より適正な乾燥に繋がります。
なお、籾すりは、乾燥後、籾が十分に冷えてから行い、ライスグレーダーの網目は1.8mmとし、適正な流量で調製しましょう。
5 次年度にむけた準備
稲刈りが終わった段階から、翌年度の水稲栽培がスタートします。稲わらや刈り株は大切な土づくり資材です。できるだけ、残った稲わら等を土に返しましょう。
近年、ヒメトビウンカが媒介する縞葉枯病の発生確認が増えています。縞葉枯病に感染した刈り株から生じたひこばえをヒメトビウンカが吸汁することで、保毒虫が増加します。収穫後はできるだけ早く一番耕を行い、ひこばえ発生を抑制し、ヒメトビウンカの越冬密度の低下を図りましょう。
【注釈】
掲載している農薬の使い方(農薬使用基準)は、農林水産省が公開している記事掲載時点での農薬登録情報等と基に作成しました。
農薬使用の際は、下記に注意してください。
- 登録内容に変更がないか、必ず最新情報を確認する。
- 使用の際は、ラベルの注意事項を必ず確認し、適切に使用する。
- 農薬使用基準は、農薬取締法に基づき、作物ごとに該当する農薬の使用方法、使用時期、回数などについて使用者が守るべき基準です。
また、同一成分を含有する農薬を併用する場合は、成分の総使用回数に従う。